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東京高等裁判所 平成9年(行コ)165号 判決 1998年4月14日

横浜市旭区柏町五八-一

控訴人

河野禮通

横浜市保土ヶ谷区帷子町二-六四

被控訴人

保土ヶ谷税務署長

右指定代理人

小暮輝信

内田健文

廣田隆男

上田幸穂

川上昌

右当事者間の青色申告取消処分取消等請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が平成四年三月五日付けでした控訴人の昭和六二年分以降の青色申告承認を取り消した処分を取り消す。

3  被控訴人が平成四年三月五日付けでした控訴人の昭和六三年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、平成元年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。

二  被控訴人

控訴棄却

第二事案の概要

当事者双方の主張は、次のとおり付加するほかは、原判決の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人の当審における主張)

被控訴人のなした青色申告承認取消処分の根拠とされた帳簿類は、被控訴人の係官が、控訴人宅より無断かつ強制的に持ち去ったものであるから、証拠能力はなく、これによって青色申告承認を取り消すことはできないし、被控訴人は、控訴人に交付すべき平成二年度の国税還付金を横領するために青色申告承認を取り消したものである。また、原判決は、被控訴人も主張していない金額を必要経費として認定するなど違算がある他、控訴人の主張する所得控除を認めず、水道高熱費として電気代しか認めていないが、これは憲法違反である。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も、被控訴人がなした控訴人の平成元年分の所得税更正処分及び重加算税の賦課決定処分のうち、国税不服審判所長の裁決により取り消された部分(原判決主文第一項に記載された部分)についてさらに取消しを求める控訴人の請求は、訴えの利益を欠き却下すべきものであり、その余の所得税更正処分及び重加算税賦課決定処分並びに青色申告承認取消処分の取消しを求める控訴人の請求は理由がなく、棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加するほか、原判決の「第三 争点に対する判断」記載のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人の当審における主張について)

1 控訴人は、被控訴人の係官が控訴人の帳簿を勝手に持ち去り、また、被控訴人が控訴人に交付すべき平成二年度国税還付金を横領したと主張するが、これらを認めるに足りる証拠はない。

2 控訴人は、原判決には、甲二六号証記載のとおりの違算がある他、所得控除やコピー機リース料を認めないのは不当であると主張する。しかし、原判決挙示の証拠によれば、控訴人の本件係争年度の事業所得(総所得金額)及び納付すべき税額は、原判決記載のとおりであると認められる。原判決に違算はなく(昭和六三年度、平成元年度の必要経費のうち、事務消耗品費について、原判決認定金額と被控訴人主張の金額は一致しており、コピー機レンタル料は事務消耗品費に含まれている)、所得控除についても、原判決は、控訴人の主張どおり、昭和六三年分として九七万五一九〇円、平成元年分として一一一万三六六〇円を算入していることが明らかである。

3 控訴人は、水道光熱費として、水道料金、ガス料金、ストーブ燃料代が認められないのは不当であると主張する。

しかし、所得税法四五条一項一号及び同法施行令九六条によれば、家事関連費のうち、事業上の必要経費とされるものは、その主たる部分が事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できる場合における当該部分に相当する経費に限るものとされているところ、控訴人の事業所は居宅兼用であり、精密機械設計業を主たる業務とする控訴人においては、水道、ガスの使用料金、ストーブ燃料代は、その大半が家事上の経費となるものであるから、「その主たる部分が業務の遂行上必要な経費」には当たらないものであり、また、控訴人においては、これら使用料金のうち、業務の遂行上必要である部分を明確に区分できる状況にはなかった(乙五九号証及び原審における控訴人本人の供述により認める)から、水道、ガス使用料金、ストーブ燃料代を必要経費に算入することはできず、原判決が電気料金のみをもって水道光熱費を算定したことは相当である。

よって、控訴人の主張は採用できない。

二  したがって、原判決は相当で、本件控訴は理由がない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 小林登美子 裁判長裁判官今井功、裁判官田中壯太は、いずれも転任のため署名押印することができない。裁判官 小林登美子)

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