大判例

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東京高等裁判所 平成9年(行コ)22号 判決

控訴人は、所得の種類と法定納期限を同じくする源泉所得税の納付義務は一個であり、控訴人の認定した「報酬」も、原判決の認定した賞与も、同じ給与所得である以上、法定納期限が同一で、所得金額(税額)の重なり合う限度で、本件納税告知等は維持されるべきであると主張するので、これについて検討する。

(一) 所得税法一八三条は、居住者に対し、給料、賞与などの給与等の支払をする者は、その支払の際その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月一〇日までにこれを国に納付しなければならないとして、給与等の支払者に源泉徴収義務及び源泉所得税に係る納付義務があることを定め、国税通則法一五条二項二号は、給与等の支払の時に源泉所得税を国に納付すべき義務が成立する旨、同条三項二号は、源泉徴収による国税は納付義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する旨を規定している。これによれば、給与等に係る源泉所得税については、その支払の時に納税義務が成立し、同時に納付すべき税額も自動的に確定するものと解される。

そして、右のように自動的に確定した源泉所得税が法定納期限までに納付されないときは、税務署長は支払者に対し、当該所得の支払と同時に確定した税額を示して納税の告知(同法三六条一項)をし、さらに督促を経て、滞納処分をすべきものとされている。このように源泉所得税についての納税告知は、前記のように自動的に確定した税額がいくらであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであるから、支払者がこれと意見を異にするときは、これを争って、異議申立て、審査請求や抗告訴訟を提起することができるものである。

このような納税告知の性質及び機能から考えると、それは源泉所得税発生の原因である給与等の支払事実ごとに納税義務が発生し、その額が自動的に確定した源泉所得税の納税義務及びその額を示すものであるから、その原因である給与等の支払事実が存在しない場合には違法となるものと解すべきである。所得の種類と法定納期限を同じくするため複数の支払事実によって発生する複数の源泉所得税につき一個の納税告知がされた場合であっても、同様のことがいえる。このことは、所得の種類と法定納期限を同じくする源泉所得税の納付義務を一個のものと解するか否かにかかわらない。一個の納付義務であるからといって、その義務の発生原因事実は個々の給与等の支払事実であることに変わりはなく、ただその事実が複数あるというだけであって、原因となる支払事実が異なることとなれば、その納付義務の存在を公に示した当該納税告知の同一性も失われることになると解すべきだからである。

このように考えると、ある納税告知がされた場合に、その原因である支払事実が存在しないけれども、たまたまこれと法定納期限を同じくする他の源泉所得税の存在が認められるからといって、その両者が基本的事実関係を同じくするものでないかぎり、そのことにより、さきの納税告知が他の源泉所得税と重なり合う限度において適法となるものと解することはできない。

(二) 本件においては、控訴人の認定した「報酬」も、原判決の認定した「賞与」も、所得の種類としては同じ給与所得に属し、控訴人の認定した「報酬」の中には、原判決の認定した「賞与」と同一の法定納期限のものが含まれていることは、控訴人主張のとおりである。しかし、控訴人の認定した「報酬」は、本件支払利息と本件租税公課の合計額から本件株式の配当金を控除した金額を被控訴人の大倉に対する無利息の貸付金と評価して、その利息相当額を被控訴人の大倉に対する「報酬」と認定したものであるのに対し、原判決の認定した「賞与」は、被控訴人が本件支払利息を大倉に代わって支払ったことにより、大倉に対し、右支払相当額の経済的利益を供与したものとして、これを「賞与」としたものである。このように、控訴人の認定した「報酬」と原判決の認定した「賞与」とは、同じ給与所得に属するといってもその内容としての基本的事実関係は全く別のものであると解される。したがって、右「報酬」に係る源泉所得税と「賞与」に係る源泉所得税とは、その課税根拠となる事実を異にするものであるから、両者は別個のものである。

(三) したがって、本件納税告知等に係る源泉所得税の納付義務は存在しないものであるから、本件納税告知等は違法であって取り消すべきものである。これが控訴人の認定した「報酬」の範囲内で維持されるべきものという控訴人の主張を採用することはできない。

(今井功 淺生重機 小林登美子)

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