東京高等裁判所 昭和19年(オ)650号 判決 1948年11月05日
上告人
横浜護謨製造株式会社
被上告人
中央ゴム工業株式会社
主文
原審決を破毀する。
被上告人の本件特許無効審判請求を却下する。
審判費用及び上告費用は各自の負担とする。
理由
職権を以て本件審判請求の適否を調査するに、本件記録及び上告人が提出した実施許諾証によれば、本件上告申立後である昭和二十一年十二月三十日に本件無効審判請求の目的である登録第一三〇五二七号特許権について、上告人から被上告人に対して、その特許発明の実施を許諾し、昭和二十二年三月二十五日にその旨の登録を経由したことが明らかであり、特許発明を許諾された者所謂実施権者が特許法第八十四條第二項の利害関係人に該当しないことはしばしば大審院判決が示したとおりである(例えば昭和十二年十月二日言渡、同年(オ)第一四号事件判決参照)。したがつて被上告人の本件特許無効審判請求は、同條第一項第二項に違反する不適法のものと云わなければならない。尤も右特許発明実施の許諾は、原審決後になされたものではあるが、該審決の未確定中に生じたものであるから、原審は結局不適法な請求について本案の審決をしたことに帰着し、違法たることを免れない(大審院昭和十九年七月十四日言渡、昭和十八年(オ)第三〇六号事件判決参照)。
よつて昭和二十三年法律第一七二号を以て改正せられた以前の特許法第百十五條、民事訴訟法第四百八條、第一号、第九十六條、第八十九條、第九十條によつて主文のとおり判決する。