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東京高等裁判所 昭和22年(オ)25号 判決 1947年9月15日

上告人 控訴人・被告 山本一雄

訴訟代理人 井上豊太郎

被上告人 被控訴人・原告 是永育子

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負擔とする。

事  實

被上告人(原告被控訴人)は昭和二十年四月二十五日是永きみ子の腹から生れたのであるが、上告人(被告控訴人)と右是永きみ子との間にできた子であつて、しかもこの兩人は婚姻關係がないとの事實關係にもとづいて本件認知請求の訴を起し、第一審で被上告人勝訴の判決があり、上告人から控訴申立があつた。ところが第一審判決は昭和二十一年十二月二十八日上告人に送達されたのに、控訴状が裁判所に到着したのは昭和二十二年二月二十八日であつた。そこで第二審では民事訴訟法第三百八十三條によつて、口頭辯論を開かずに控訴却下の判決をした。記録によると、原審裁判長が右判決の言渡期日を指定したこと、その期日に判決言渡のあつたことは明かであるが、その期日が當事者に告知されたことは證明されない。

理由

上告理由第一點は本件判決言渡につき當事者にその日時を告知せずしてなしたることは違法である。民訴三八三條は告知をなさざる判決をみとめたる趣旨にあらず(民訴一九〇條参照)。故に口頭辯論を經ざる判決言渡につき豫め言渡期日の通告を缺く手續は違法なりというのである。

口頭辯論を經ずして判決を爲すことが出來る場合には豫め其の言渡期日を指定する必要がない。原審の裁判長が原判決の言渡期日を指定したのはつまり無駄なことをしたといへるから右指定の裁判の告知がなく効力が生じなかつたとしても原判決は違法の裁判といへぬから論旨は理由がない。

上告理由第二點は本件控訴は期間經過後の控訴なる故に不適法なりといふ原判決は右の事實を證據により認定せねばならない筈なるに判決にその説明を缺く。訴訟條件が適法なりや否やもまた訴訟法律事實なる故に證據により認定せねばその判決は違法であるといふのである。

第一審判決が昭和二十一年十二月二十八日上告人(被告)の復代理人に送達せられたことは本件記録中の送達證書によつて明かで控訴状が第一審裁判所に提出せられた日は昭和二十二年二月二十八日であることは控訴状に押捺せられた鳥取地方裁判所の受付印によつて判かる。原裁判所は以上の證據によつて本件控訴を期間經過後の控訴と認定した趣旨であることは領知し得られるから本論旨も理由がない。

仍て民事訴訟法第四百一條第九十五條第八十九條によつて主文の通り判決する。

(裁判長判事 森田豊次郎 判事 箕田正一 判事 藤江忠二郎 判事 柳川昌勝 判事 深井正男)

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