大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和24年(か)11号 判決

被告人に対する窃盜被告事件につき昭和二十四年一月二十九日東京地方裁判所八王子支部において懲役二年六月に処する旨の判決の宣告を受けたが、之に対し控訴するつもりで、同日保釈許可の申請を為し同日許可せられて出所帰宅した。ところがその晩から下痢をおこし医師にかかつて寝てしまつた。しかし控訴申立の手続は自分の兄山本政明と自分の弁護人がしてくれたものと思つていたところ、検察庁から刑の執行をするから出頭せよとの通知があり、この時初めて控訴申立の手続がしてなかつたことを知つたのである。後に聞けば、兄は素人であり、弁護人は九州方面へ旅行中とのことであり、自分は学問がなく裁判のことは知らなかつた。右は自己又は代人の責に帰すべからざる事由によつて上訴の提起期間内に上訴を為すことができなかつた場合に当るから上訴権の回復を請求するというにある。

よつて本件記録に徴するに、被告人に対する窃盜被告事件について、昭和二十四年一月二十九日東京地方裁判所八王子支部において、被告人を懲役二年六月に処する、未決勾留日数中百五十日を右本刑に算入する旨の判決の宣告があつたこと。右の判決宣告に際しては被告人は法廷に出頭し、その言渡に立会し、裁判官から上訴申立期間及び申立書を提出すべき裁判所をも告知されていること。その後被告人又は被告人のため上訴をなし得るものから上訴の申立がなく、従つて前記判決は確定したことは明らかである。被告人は下痢のため医師にかかり寝ていたが兄と弁護人が上訴の手続をしてくれたものと思つていた。自分は無学で裁判のことは知らなかつたと主張するが、右の如き事由は上訴権回復請求の事由たる自己又は代人の責に帰すべからざる事由に該当しないことは明らかであるから、被告人の本件上訴権回復の請求はその理由なく、従つて本件即時抗告は棄却すべきものとし、刑事訴訟法施行法第二条旧刑事訴訟法第四百六十四条第四百六十六条第一項後段に従い主文のとおり決定する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!