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東京高等裁判所 昭和24年(新を)1012号 判決 1950年7月03日

被告人

椎名幸雄

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

前略。刑事訴訟法第二百七十一条第一項刑事訴訟規則第百七十六条第一項に定めた起訴状の謄本を、遅滞なく被告人に送達すべき旨の規定や、刑事訴訟法第二百七十五条、刑事訴訟規則第百七十九条の被告人に対する第一回公判期日指定についての、所謂猶予期間に関する規定は、いづれも被告人の権利防護の必要上定められたことは疑のないところである。ところが、記録を調べて見ると、原審は被告人に対する昭和二十四年四月十八日附追起訴状記載の、窃盗被告事件については、曩に起訴された昭和二十四年三月三十一日附起訴状記載の窃盗被告事件と、その第一回公判期日である同年四月二十七日これを併合して審判したのであるが、右追起訴状の謄本の送達について、同日被告人の右第一回公判審理期日中、その留守宅に送達されたことは所論のとおりであるから、該手続が所論のように前掲諸法規に違反することは明らかである。しかし被告人、及び原審弁護人は右公判期日において該追起訴状記載の被告事件について、何等異議をとどめないで陳述し、加うるに、原審は右弁護人の申請を容れ、その権利防護の為公判の続行を許可し、次回期日を同年五月二十五日午前十時と指定し、更に同期日において、被告人及び弁護人の為、その権利防護の機会を与え、もつて右手続上の欠陥を補正して前記諸法規の趣旨を充足するに遺憾なからしめたことを窺知することができる。

従つて、該手続上の法令違背は冐頭誤示のような事由によつて、所謂判決に影響を及ぼすべき違法があつたと為すことはできないから、論旨は結局理由がないことに帰する。

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