大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和24年(新を)16号 判決 1949年5月18日

被告人

松井源一

主文

本件控訴を棄却する。

理由

被告人の勾留に際し裁判官の尋問を要することの必要条件であることは洵に所論の通りであるがこの手続を履践したことを明確にする書類を起訴後受訴裁判所に提出することを要求せられていない限り、裁判所は提出された勾留状の要件が具備せられている以上その発付手続が適法に履践されたものと認めるのを相当とする。従つて記録上勾留に関する被告人の尋問調書がないことを以つて判決に影響を及ぼすべき違法がある旨の主張は失当である。

(註、論旨「被告人は起訴前裁判官の発した勾留状により勾留された。……公判裁判所で被告人が適法な勾留手続によつて勾留されたか否かを調査する規定はないがその権利があると思う。若しその勾留が不適法であつたとしたら自由な人の身体に不当の拘束を加えて公判をしたことになろう。直ちに憲法違反となるおそれがあるからである。公判で勾留が適法か否かを立証するのはこれを請求しその執行を指揮し而してその被告人に対する公判を請求する検事にその義務があるのはいうまでもないが、弁護人においてもこれに関する調査を裁判官に請求出来ねばならない。このような重要な問題が記録上どう手続されているのか判らないのは法令の不備か取扱上の事務の欠陥かは弁護人の克くしらないところであるが人を拘置していることの正当性を記録の上に明かとしていないのは不思議でならない。……勾留が適法か否かを公判裁判所が調査する理由がないというときは勿論理由があると云う場合のいずれも判決に影響することと信ずる」)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例