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東京高等裁判所 昭和24年(新を)2189号 判決 1950年4月10日

被告人

内藤清美

主文

原判決を破棄する。

本件はこれを宇都宮地方裁判所太田原支部に差戻す。

理由

前略。

控訴趣意第四点について。

(イ)  所論により原判決挙示の相馬兼次、外二十五名作成の各売渡始末書並びに、原審証人後藤初一同渡辺利雄、同藤田吉次の各供述及び、原審公判廷における被告人の供述を調査すると、被告人の判示肥料の買入先は判示の松浦勝志外二十名より少くとも、七名以上多いことを認めることができるから判示の外、二十名が何人なるやは原判決の記載自体によりてはこれを看取するに由ない。加之、記録を精査すると、松浦勝志外二十名より被告人が肥料を買入れたとすれば、その買入数量並びにその代金は到底判示と一致するに由ないことも、これを看取するに難くない。然らば、原判決は右の点においてその理由にくいちがいがあるから論旨は理由があり、更に職権をもつて調査するに、原判決のように、その第一の犯罪事実を摘示するのに「被告人ハ(中略)第一、昭和二十三年五月頃ヨリ昭和二十四年三月マデノ間、数十回ニ亘リ松浦勝志方外数十箇所ニ於テ同人外二十名ヨリ(中略)硫安計七千七十六瓩二百五十三瓦過燐酸石灰計三十七瓩五百瓦ヲ(中略)計代金二十九万三千二百五十円ニテ買受ケ」と判示したのでは、各犯罪事実の内容が殆んど示されていないし、原判決挙示の証拠と対照しても、判示の「外二十名」が証拠に掲げた売渡始末書作成者二十六名のうちの誰であるかさえ判らない。もとより、刑法連続犯の規定が廃止された現在においては、従来連続犯を構成した各個の犯罪は、いづれも併合罪の関係に立つのであるから、これを判示するには各個犯罪事実をそれぞれ分別し得る程度に特定し、少くとも証拠と綜合してその認定した犯罪事実が各別に、法令の適用を受けられる程度にこれを示さなければならないのであつて、前記のような判示では併合罪の関係に立つ各犯罪事実を示したものということはできない。

(ロ)  すなわち原判決は判決に理由を附しない違法があり、原判決は右の各点において破棄を免がれない。

なほ職権で調査すると、本件起訴状には各別に訴因が記載されて適法な公訴がなされたに拘かはらず、原審第一回公判において検察官は、記訴状を朗読した後、右起訴状より訴因の分別的記載部分を口頭で撤回し、(原審第一回公判調書の記載による)訴因を不明確にした過誤を犯してはいるが、この誤りは前記適法な起訴状そのものまでも、不適法ならしめたものではないものと解するから公訴棄却の判決をなすべきではない。

よつてその他の控訴論旨及び他の点についての判断を省略し、刑事訴訟法第三百七十八条第四号第三百九十七条第四百条本文によつて原判決を破棄し、本件を原裁判所に差し戻すこととし主文の通り判決する。

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