東京高等裁判所 昭和24年(新を)2379号 判決 1950年6月15日
被告人
金鐘煥
主文
原判決を破棄する。
本件を前橋地方裁判所へ差し戻す。
理由
弁護人窪谷朝之の控訴趣意第一点(二)について。
しかし、公務執行妨害罪は公務員の職務を執行するに当り之に対し暴行又は脅迫を加えた場合には常に成立するものであつて国税犯則取締法第十九条の二の罪は右の如き暴行脅迫等の手段を用いずして間接国税に関する犯則事件について国税犯則取締法第一条の規定による收税官吏の検査を拒否し妨害し又は忌避した場合に成立するものと解すべく收税官吏の検査等を妨害した場合には暴行脅迫を手段とした場合にも常に国税犯則取締法第十九条の二の適用あるに過ぎずとなす論旨は到底採用できないから論旨は理由がない。
(弁護人窪谷朝之の控訴趣意第一点(二))
原審判決の「罪となるべき事実」中判示第二事実に付いて刑法第九十五条を適用しているのであるが本件の如き判示事実に付いては一般刑法に優先すべき特別法なる国税犯則取締法(明治三十三年三月十七日法律第六十七号、昭和二十三年法第一〇七号改正)の規定が現存しているのであるから本件事実に付いては宜しく右の特別法たる国税犯則取締法所定の第三条(間接国税ニ関シ現ニ犯則ヲ行ヒ……)違反の際同法第一条所定の通り收税官吏が犯則事件に付調査取調検査を為したる際之れを妨害したる点に付同法第十九条の二を適用すべきものと考えらる。特別法は一般法に優先するの原則に原審判決は違背している過誤ありと謂うの外はないのである。
(註 本件は擬律錯誤により破棄差戻)