東京高等裁判所 昭和24年(新を)3489号 判決 1950年4月08日
被告人
山形景雄
主文
本件控訴を棄却する。
理由
前略、被告人が大蔵事務官として大磯税務署に勤務し、同署の間税課長として酒類製造免許下附等についての職務権限のあつたことは、被告人の原審公判廷でのその旨の供述によつて明らかであり、一九四七年五月一五日の「連合国人による商業行為の運営に関する覚書」及び一九四九年一月一四日の「非日本人の日本においての事業活動に関する覚書」或いは、一九四七年一一月二九日の「非日本人に対する租税の適用に関する覚書」によれば、孰れも非日本人が、日本において、事業活動をなす場合には、日本人と平等且無差別な待遇をなすべきことが、要求せられており、殊に租税の適用については、連合軍将兵、占領軍所属の民間人、及び、その他連合国最高司令官附属の、公式代表以外の一切の外国人に対して、差別なしに、一切の地方税、及び、国税を非日本人に適用することが認められているのであるから仮りにエドワード、イー、ダウンが、所論の如く、連合国人であるとしても、同人が日本において酒類製造販売業を、営まんとする以上、酒税法の定めるところに従い、日本政府の免許の下附を必要とすること勿論であるから、被告人が同人の差し出した酒類製造免許申請について、その許否に関する事務を取り扱うことは、もとよりその職務の範囲内であると、解すべきであり、その職務に関し、金品を收受すれば、收賄罪の成立すること勿論であるから論旨は理由がない。