東京高等裁判所 昭和24年(新を)61号 判決 1949年6月24日
被告人
西村吉男
外一名
主文
本件控訴は孰れも之を棄却する
訴訟費用は被告人両名の負担とする
理由
被告人西村吉男の弁護人佐藤直敏及被告人渡辺武雄の弁護人榊純義の各控訴の趣旨第一点に対する判断。
弁護人の援用する本件記録に現はれて居る各事実に依れば原審は其の証拠調手続に於て檢察官が本件犯罪敢行の事実を立証する爲各被告人の供述調書(司法警察員、副檢事及家庭裁判官の)に付証拠調の請求をしたのに対し其の取調をする旨の決定を爲し檢察官に対し前記各供述調書の朗読を求めたのに拘らず檢察官に於て右書類の朗読を爲し且之を提出したこと認むべき証跡のないことは弁護人所論の通りである。而して右は檢察官に於て右証拠調の請求を撤回した事実の見るべきものなき限り裁判所の決定をしたのに拘らず其の取調を爲さなかつたことに帰着し所論の刑事訴訟法第三百七十九條に所謂訴訟手続に法令の違反及審理不盡があつたものと謂はなければならない。然し乍ら原判決は記録上明白である通り被告人等の本件犯行を同人等の原審公判に於ける供述並適法に証拠調手続の履践せられた本件各被害者の被害顛末書及各被害者に対する司法警察官の聽取書等に徴して之を認定して居り所論の被告人等の供述調書は何等之を断罪の資料に供して居らず原判決挙示の前記各証拠に依れば優に被告人等の本件犯行を認定し量刑の基礎となる情状を知ることが出來るから前記法令違反は未だ以て原判決の事実認定並量刑上に何等影響するものとは考へるごとは出來ない。從つて原審の訴訟手続には前記法令違反等の存することは正に論旨の指摘する通りであるが斯る違法は前述の如く原判決に影響を及ぼさぬことは明白であるから右弁認人の主張は本件控訴の事由として之を採用することが出來ない。論旨はいずれも理由がない。
以下省略