東京高等裁判所 昭和24年(新を)88号 判決 1949年7月19日
被告人
酒井七郞
主文
本件控訴はこれを棄却する。
理由
弁護人西ケ谷徹の控訴趣旨は同人作成名義の控訴趣意書と題する末尾添附の書面記載の通りである、これに対し当裁判所は左の通り判断する。
所論は要するに本件犯行の動機が惡質でなく且つ松本留作、鈴木喜輔、鈴木八郞左衞門各作成名義の書面を新らたに提出し刑の執行猶予を求めたものであるから結局量刑不当を理由とするものである。しかし原審訴訟記録によれば被告人の過去の生活は健全なものでないし本件犯行も二回に互り自轉車を窃取せるものである点などを考えると原審二年の懲役刑の言渡は量刑不当ではないなほ刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をする場合には既に原審の訴訟記録及び原審に作て取調べた証拠に現われている事実であつて刑の量定が不当であることを信ずるに足ることを援用しなければならぬのである。
しかるに弁護人提出の右松本外二名の作成名義の書面中松本留作名義の供述書は明らかに原判決言渡後作成せられたものであるし他の二名の者の書面は日附及び金額の記載もないものであるからこれを控訴趣意に採用する事はできない、論旨は理由ないものである。
よつて刑事訴訟法第三百九十六條、第三百八十一條、第三百九十三條により主文の通り判決する。