東京高等裁判所 昭和25年(う)2681号 判決
刑事訴訟規則第四四条において、公判調書に記載しなければならない事項の一つとして「公判をした裁判所」を挙げているが、この裁判所というのは公判審理の主体たる裁判所を指すのであつて、純然たる訴訟法上の意味のものである。それ故に、この意味における裁判所は観念的存在であつて空間的存在ではない。従つてこれを表示するに場所をもつてすることはできない。所論は右裁判所を以て司法行政上の官署としての裁判所の庁舍の意味に解する誤を犯すものであつて、もとより採用に値しない。さすれば、原審公判調書に「公判をした裁判所」として「東京地方裁判所刑事第十六部」とのみ記載し、その刑事第十六部の法廷の存在する場所を表示しなくても、何等違法とすべき筋合ではない。
論旨は理由なきこと、勿論である。