大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(う)2725号 判決 1950年10月31日

被告人

平野茂治

主文

本件控訴はこれを棄却する。

当審における未決勾留日数中百日を被告人が言渡された懲役刑に算入する。

理由

田中弁護人の論旨第一点について。

記録を検討すると原審第三回公判期日において被告人は検事が取調を請求した所論逮捕手続書を証拠とすることに同意したことが明白である。尤もその後同期日において弁護人は当時の犯罪事実を確認するために飛地和七郎を証人として尋問ありたき旨請求したことは所論のとおりであるが、右請求により、さきになした被告人の前記同意を取消したものとは解されない。仮りに弁護人において右証人の取調を請求したことにより、前記被告人の同意を取消す趣旨なりとしても、一旦被告人の同意により取得した右手続書の証拠能力を奪うことはできないものと解すべきである。また憲法第三十七條第二項の規定は当事者の請求する証人は全部これを裁判所が喚問し当事者に反対訊問の機会を与えることまで保障しているのでないことは己に最高裁判所の判例とするところである。故に原審が右証人取調の請求を却下しても所論のように憲法違反ではない。従つて原判決が右手続書を罪証に供したのは適法である。論旨は理由がない。

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