大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(う)3156号 判決

原審第八回公判調書の記載に依れば、所論のように、昭和二十五年六月十四日の原審第八回公判期日には被告人広賀長太郎は出頭し被告人船橋芳郎は不出頭の儘公判が開廷され、弁護人が曩に申請して採用された証人志村彦平の申請を取下げる旨を述べ被判官は同証人を喚問する旨の決定を取消した後職権に依り被告人船橋に対する申請を分離し、同被告人に対する次回公判期日を来る六月二十八日午前八時と指定告知したことを認めることができるが、裁判官が右証拠決定を取消すについて検察官の意見を聽いた形跡が、同公判調書上認められないことも亦所論の通りである。しかしながら刑事訴訟法第二百九十七条に違反して裁判所が訴訟関係人の意見を聽かなかつた場合においても、これがため、裁判所のなす証拠決定が無効を来す趣旨であると解せられないことは、同条の立言の態様よりするも明らかであるし、況や、既に訴訟関係人が証拠申請を取下げた後その申請に依る証拠決定を取消すような場合には、当時者主義を根幹としている刑事訴訟法の立場よりして、その取消について相手方の意見を聽くことがなかつたとしても、これに依つてその取消決定を無効のものとしなければならない理由はない。従つて原審が証人志村彦平の証人尋問の決定を取消すについて原審検察官の意見を聽かなかつたとしても、固より該取消決定を無効のものと解すべきではない。又原審が、公判期日の指定を午前八時と指定したことは異例に属することであるが、審理の便宜上必要ある場合に午前八時と指定しても、必ずしも開廷不能であるか、開廷すべからざる時刻を指定したものと認められないから、午前八時と指定したことに依り期日の指定が所論のように当然無効となることはない。それ故原審が被告人船橋に対する公判期日を六月二十八日午前八時と指定告知したことも亦無効ではないのであるから、原審の証拠調手続竝に公判期日の指定には、所論のような違法はなく論旨は理由がない。

(弁護人控訴趣意)

第三

被告人両名に対する原裁判所の証拠調手続と被告人船橋芳郎に対する原裁判所の公判期日の指定に違法がある。第八回公判調書の記載により明らかな通り同公判は被告人広賀出頭被告人船橋出頭で開廷され弁護人が曩に採用された証人志村彦平の申請を取下げたので、裁判所はその証人決定を取消した後職権により被告人船橋に対する審理を分離し次回公判期日を来る六月二十八日午前八時と指定告知し被告人広賀については同日弁論を終結して判決を言渡した。刑事訴訟法第二百九十七条によれば裁判所は証拠調の範囲等を定め或は之を変更するには訴訟関係人の意見を聽かなければならない。然るに右証人決定を取消すに当り検察官の意見を聽かなかつたのであるから右取消は無効であり被告人両名の為に公判を続行し次回期日に証人志村彦平を召喚尋問して弁論を終結すべきであつた、然も此証人は被告人等の供述調書を作成した司法警察員であり被告人等はその記載内容を争つているから重要な証人である、従つて此の違法は被告人両名の事実認定引いては判決主文に影響を及ぼすこと明らかである。次に被告人船橋について前記の如く次回公判期日を六月二十八日午前八時と指定告知したが当時裁判所の執務開始は午前九時である、これは恰も執行時間後極端に云えば夜間を期日に指定した場合と同様開廷不能又は開廷すべからざる時期を公判期日としたのであるから斯る期日の指定は当然無効であり此の無効の指定期日に開かれた公判は空中に楼閣を築いた様なものでそれによつて生した結果も又総べて法律上の効力がないと云うべきである。以上以れの点からするも原判決は到底破棄を免れないと思料する。

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