東京高等裁判所 昭和25年(う)3355号 判決
しかし原判決の判示趣旨は、自己の用途に供する目的で判示会社に入金せずして着服横領したものであるというにあつて所論のように自己の用途に費消する意思で判示集金を為したというのでない。換言すれば、判示趣旨は、集金した金員を被告人が会社のために保管中自己の用途に供する目的で会社に入金しないで、着服横領したというのである。そして原審の取調べた証拠に現われた事実に徴すると該金員の所有権は判示会社にあること明白であり且被告人は遅滞なくこれを判示会社に入金する義務があるに拘らずこれを擅に自己の用途に充てるために着服したことは明白であるから原判決には所論のような証拠に基かない認定をした違法はない。
なお被告人が固定給の外に歩合で報酬を受くる権利があつたとしても、判示のような目的で判示会社に入金せず着服することは許されない。その他原判決挙示の証拠を調査すると原判決認定の犯罪の口数につきその証拠が充分である。従つて原判決には理由不備であるという違法はない。
論旨いずれも理由ないものである。