東京高等裁判所 昭和25年(う)3389号 判決
原審第一回公判調書の記載に依ると、原審検察官が、所論の司法警察員野秋菊夫作成にかかる捜索差押調書を証拠として取調を請求するに際し、その捜索差押についての裁判官の捜索差押許可状をも併せて証拠として取調を請求した形迹の認められないこと所論の通りである。しかし検察官が捜索差押調書を証拠として取調を請求するに当り、これについての捜索差押許可状を証拠として取調を請求することが必ずしも所論のように通例であるということができないのみならず、捜索差押許可状を証拠として取調請求をしないからとて、直ちに捜索差押調書記載の当該捜索差押が、裁判官の許可状なしになされたものと解すべきでないこと勿論である。従つて前記司法警察員野秋菊夫作成の捜索差押調書は、所論の事由に依つては無効の調書であり証拠能力のないものと認められないのみならず、寧ろ、該調書はその記載に徴し、司法警察員野秋菊夫が、その権限に基いて適法に作成したものということができるのである。しこうして、前記原審公判調書の記載に依ると、被告人並に原審弁護人は右捜索差押調書を証拠とすることに同意したことが認められ、且つ原審公判廷における被告人の供述に依ればこれを証拠とすることが相当と認められるのであるから、原判決が、右捜索差押調書を原判示事実認定の証拠に援用していることは、所論のように採証の法則に違反したものではない。それ故原判決には所論のような違法はなく論旨は理由がない。
弁護人控訴趣意第二点について。
原審第一回公判調書の記載に依ると所論のように原審検察官は証拠調が終つた後、法律の適用について意見を述べるに際し単に相当法条を適用の上と述べたに止まることを認めることができる。しこうして刑事訴訟法第二百九十三条第一項は、証拠調終了後検察官は法律の適用について意見を述べなければならないと規定していること所論の通りであるが、如何なる程度に、又如何なる方法に依り、法律適用について意見を述べなければならないかを規定していないのであるから、検察官は適当と認める程度方法に依り述べれば足り、単に相当法条を適用の上と述べたとしても、法律適用について全然意見を述べなかつたものということはできないし、検察官は既に起訴状において被告人の犯行が如何なる処罰法規に該当するものであるかを明示しているから、右の程度に、法律適用についての意見を陳述していても、必ずしも被告人並に弁護人の防禦権の行使を不十分ならしめたものと解することはできない。従つて原審の審理手続には所論のような違法はなく、この点の論旨も亦理由がない。