東京高等裁判所 昭和25年(う)3519号 判決 1950年11月18日
被告人
藤城顯義
主文
本件控訴を棄却する。
理由
弁護人の控訴趣意第四点について。
本件起訴訴状によつても其の公訴事実第一につき公務執行妨害罪として公訴が提起せられたものとは認め難く又原審が右につき公務執行妨害罪の成立を認め、被告人に対して刑法第九十五条を適用処断したと認め難いことは原判決書の記載に徴し明白であるから、此の点に関する論旨は理由がなく、更に右刑法第九十五条第一項に所謂「公務の執行」については公務員が其の公務所で職務上為すべき事務を取扱つて居た場合をも含むものと解すべきことは同法条が其の職務執行に何等の制限を加えて居ないことからしても明かであるところ、原判決挙示の証拠、殊に並木博信の検事に対する供述調書の記載によれば被告人が原判示第二の日時頃横芝町警察署に赴いた際同署巡査並木博信が其の事務室内で当直勤務中であり、被告人は同巡査を判示の通り脅迫したものであつて為めに同巡査が千葉県防犯統計課へ報告のため執筆中の経済事件延数件数統計表の作成を一時中絶するの止むなきに至らしめた外当直勤務を不法に一時混乱におとしいれたことを認めるに充分であるから原審が之を公務執行妨害罪に問擬したのは違法でなく論旨は採用に値しない。