東京高等裁判所 昭和25年(う)4532号 判決
原判決挙示の証拠によれば、原判示事実はこれを認めるに十分であり、記録に徴しても右認定が誤であると思われる廉は存しない。なお、麻薬取締法第二条の規定によると、同じく麻薬による被施療者に対し麻薬を渡す場合でも、麻薬施用者(医師、歯科医師等)が渡す場合についてはその第九項において「施用のため交付する」という語を用い、麻薬小売業者が渡す場合についてはその第八項において「譲り渡す」という語を用いている。そして右第二条第九項所定の施用のために交付するという場合であつても、麻薬施用者から被施療者に対し麻薬の所有権が移動する事実を必ずしも否定することはできないのである。従つて同法にいわゆる麻薬の譲渡という観念と、麻薬の施用のための交付という観念とを、所論のように所有権の移転の有無の一事をもつて区別することが妥当でないこと明らかである。そして同法第三条第一項にいわゆる麻薬の施用のための交付とあるのも、右第二条第九項の規定を承けたものであつて、麻薬の施療者が被施療者に渡す場合のみを指称するものと解すべきであり、麻薬取締法の律意に鑑みるときは本件のように麻薬の引渡が麻薬による被施療者から施療者に対し行われた場合は、所有権の移転を伴うと否とを問わず、すべて同法第三条第一項第十二条にいわゆる麻薬の「譲り渡し」「譲り受け」とあるのに該当するものと解するのを相当とする。従つて原判決には所論のような違法は存しない。論旨は理由がない。