東京高等裁判所 昭和25年(う)460号 判決 1950年9月14日
被告人
林実こと
林上出
主文
本件控訴はこれを棄却する。
理由
弁護人上田次郎の控訴趣意第一点について。
原裁判所の認定した事実は、被告人は政府の免許を受けないで、飲用に供する目的で、昭和二十三年十二月中旬頃、被告人の自宅において、アルコールを水で稀釋させて酒精分約二十四度一分の雑酒合計四斗を製造したと言うのであることは所論のとおりである。然しながら原酒に割水して品質を異にする特殊の酒類を製出することは、酒税法第十四条に所謂酒類の製造に該当するものと解するを相当とする。本件記録によれば、被告人は油分の混入した酒精分九十四度位のアルコールを、飲用に供する目的で、油分を分離させた後、これに割水をして酒精分二十四度一分強の飲用酒類を製出したのであるから、これはとりもなおさず品質を異にする酒類であると言うべく、酒税法所定の「雑酒の製造」に該当し、單に原酒の本質保存のための矯正行為または加工の程度を逸脱したものと解するを相当とする。なお論旨引用の昭和三年一月三十一日の大審院判決は本質保存のための矯正行為をなした場合であつて、本件とは事案を異にするから、本件に関し適切でない。結局弁護人は独自の見解に立脚して原判決を論難するもので、論旨は採用し難い。