東京高等裁判所 昭和25年(う)5073号 判決
しかし、所論引用の最高裁判所判例(昭和二三年(れ)第七六三号同二四年二月九日大法廷言渡)の趣旨は刑法第五五条廃止前大審院が認めたような連続犯を構成する各所為はすべてこれを各別個の犯罪とし併合罪として処理すべきものであるとするものであるとは解せられない。同一罪名に触れる数個の行為は犯意の単一と被害法益の単一とによりこれを包括して一罪となし得ることは当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(う)第五一六三号昭和二七年一月二六日当裁判所第一二刑事部判決)。
原判示第一、二の各事実はそれぞれ単一の犯意の下になされたという趣旨で、しかも被害法益がそれぞれ単一の同一罪名に触れる行為であるから一罪を構成するものと解すべきである。既に一罪だとすれば原判決のように犯行の始期と終期、犯行の場所、その目的物並びに数量の合計を掲記してある以上各訴因は特定しているものと解すべきである。
原判決には所論のような違法がない。論旨は理由がない。
なお、論旨のように判示第一、第二の各事実を併合罪と解することは被告人に不利益な主張であるから被告人のためにする本件控訴の趣意としては適法な理由ではない。論旨はこの点においても理由がない。
同第三点について。
判示第二事実中(一)の事実はこれ包括して一罪と認めたのであるからそのうちの一部の所為について所論のようにその罪の成立を認めなかつた場合には包括一罪中の有罪を認めた部分の所為のみについて主文において有罪を言渡せば足るもので有罪と認めなかつた所為は特にそれについて無罪の言渡をすべきものでないことは既に判例の示すところである。所論は第二の(一)乃至(八)を構成する各所為もすべて併合罪であるという前提に立つものであるがその前提をとりえないことは既に第一点において説明したとおりである。
論旨は理由がない。