大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和25年(う)5232号 判決

よつて按ずるに、昭和二二年政令第百六十五号第一条の法意は一、連合国占領軍の財産、二、その将兵の財産、三、連合国占領軍に附属する者の財産、四、連合国占領軍に随伴する者の財産で、占領軍関係福利機関以外の者から日本国内において取得した日本国製品以外の物(以上を所謂進駐軍物資或は財産と総称している。)は何人も公に認められた場合以外には収受所持をしてはならないというのであつて、犯人においてその物が所謂進駐軍物資であることを知つていて且つ客観的にその物が進駐軍物資である以上は公に認められた場合以外にこれを所持しておれば犯罪を構成するのであつて、犯人において右一乃至四のいずれに属するものであるかを区別して認識することは必要がないのである。而して原判決挙示の一、第二港湾司令部大洋交通係将校ジエームスピー、ウエンツユラー中尉作成の証明書、一、エフ、ジエー、カーン軍曹の昭和二四年一〇月一一日附作成の書面、一、同人の同年九月九日附作成の証明書、一、一九四九年五月二一日附第二港湾司令部作成の事実報告書(事件番号第一三四七号)の各記載によれば、本件各煙草と石鹸はアメリカ合衆国陸軍の傭船した船舶の乗組員の所有に属しアメリカ製品であることを認めるに十分であるから右物件は連合国占領軍に附属する者の財産たる所謂進駐軍物資であることは明白である。且つ原判決挙示の被告人等の原審公判廷における供述によれば被告人等はいずれも右物件が所謂進駐軍物資であることを認識していたことを認めるに十分であり、原判決挙示の証拠によれば原判決認定の第一、第二事実を優に認めることができ、その他原審が取り調べた証拠に現われた事実によつても右認定に誤があるとは認められない。原判決には事実の誤認はない、論旨はいずれも理由がない。

弁護人控訴趣意第二点について。

本件起訴状によれば、進駐軍物資である煙草四百七十九カートン石鹸百四十四個入二〇箱の所持であり、原判決の認定した事実は連合国占領軍に附属する者の財産である煙草四百七十九カートン石鹸百四十四個入二〇箱の所持であることは所論のとおりである。しかし連合国占領軍に附属する者の財産であつても、これを所謂進駐軍物資と称していることは第一点において説明したとおりで、原判決はその内容を詳細に判示したにすぎない。即ち進駐軍物資との表示を、その内容を前記一乃至四の区別の内の何れかに判別して判示するのは起訴の同一性は勿論、害することなく、同一訴因の埓外でもない。原判決は審判の請求をうけた事件について判決せず、審判の請求をうけない事件について判決したものとは到底認められない。論旨は理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!