東京高等裁判所 昭和25年(う)5349号 判決
所論のように行為が数個ある場合であつても、その数個の行為が単一乃至は継続した同一の意思の発現たる動作であり、而もその被害法益が一箇である様な場合は、之を法律上一罪と解し得るのであるから、其の箇々の行為中に不特定の部分があつたとしても、之を全体として観察しそれが一の訴因として他の訴因と識別し得る程度である以上、之を訴因として特定して居ると謂うに妨げない。今本件記録について之を観ると、其の起訴状中公訴事実の項に記載されているところは被告人が木下吉一から売却斡旋方を依頼され竹田豊蔵外一名に売却した故銑鉄三三屯六三五瓩の代金合計一九万八二四〇円を右木下吉一のため保管中其内金九万五三二円を昭和二五年四月一二日頃から同年五月二五日頃迄の間擅に大宮市其他で費消して橫領したものであると謂うに在つて、検察官が前記と同様な見解に立ち之を一罪と解して記載したことが看取し得られるのみならず、右は一の費消橫領の訴因として他の訴因と区別し得られ且其の同一性を認識するに足るから、箇々の費消の日時、場所、金額等につき稍明確を欠くとしても、之を目して訴因が特定していないとは謂い得ない。
従つて其の不特定を前提とし本件公訴を不適法とする本論旨は採用に値しない。