大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(ネ)1015号 判決

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が控訴人の訴願に対し昭和二十四年十二月二十二日なした却下の裁決はこれを取消す。長野県上伊那郡中箕輪町農地委員会が昭和二十四年七月十三日樹立した買收計画より控訴人所有の別紙目録記載の宅地及び建物を除外する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上並びに法律上の主張は、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

(立証省略)

三、理  由

まず本訴の適否について判断する。

自作農創設特別措置法第四十七条の二の規定によると、同法による行政廳の処分で違法なものの取消又は変更を求める訴は、当事者がその処分のあつたことを知つた日から一箇月以内にこれを提起しなければならないこととなつている。そこで本訴が右出訴期間内に適法に提起されたものであるか否かについて次に考える。

控訴人は昭和二十四年十月二十五日本件宅地及び建物に対する買收計画に関し、被控訴人長野県農地委員会に訴願を提起したところ、同委員会は同年十二月二十二日これを棄却する旨の裁決をなし、その裁決書の謄本が昭和二十五年一月十日控訴人の住居に送達されたことは当事者間に爭がない。

しかるところ、控訴人は「右裁決書謄本を受取つたのは控訴人の父市川豊一であつて、当時控訴人は長野県上伊那郡箕輪村なる藤沢由一方に赴き不在中であり、帰宅後裁決のあつたことを知つたのは同月十六日である」と主張し、右裁決書謄本の送達に当つてこれを受領したものが控訴人の父市川豊一であることは、成立に爭のない乙第一号証の一、二並びに原審証人市川豊一の証言に徴して、これを認めることができる。しかしながら前掲各証拠を綜合すると、控訴人は右市川豊一の娘で当時同人とその居住を共にし、しかも二十三才の年若であるところから、農事については父市川豊一において控訴人に代わりその一切を処理していたものであつて、殊に中箕輪町農地委員会に対する折衝も市川豊一が控訴人に代わつて事に当つていたばかりでなく、被控訴人長野県農地委員会に対する訴願の提起その他訴願に関する手続等についても、すべて市川豊一が控訴人を代理して処理してきた事実を認めるに十分である。以上の事実からみれば、右市川豊一は控訴人の父として、控訴人の農事経営一切は固より、町農地委員会並びに県農地委員会に対する折衝を始めとし、訴願手続など外部的な事務までもすべて控訴人を代理して処理していたものであることが明らかである。

してみれば、昭和二十五年一月十日控訴人の住居において、かかる農地経営に関し包括的なる代理権限を有していた市川豊一によつて本件裁決書の謄本が受領されたことは、控訴人に対する裁決書謄本の送達として適法であることは論を俟たない。のみならず、冐頭において既に述べたように、出訴期間の起算点とされている「当事者がその処分のあつたことを知つた日」という前記法条の規定に所謂「当事者」とは、單に当該行政処分の相手方本人のみを指すのではなく、その行政処分の対象について本人に代わり一切を処理する代理権限を有する者をも含むものであると解するのが、同法条の法意に照し妥当であると考えるから、仮りに右裁決書の謄本が送達された当時控訴人は不在であつて、その裁決のあつたことを知らなかつたとしても、前述のような包括的な代理権を有する市川豊一が昭和二十五年一月十日裁決書謄本を受領し、從つて反証なき限り該裁決のあつたことを知つた以上、その效果は控訴人自身についても生ずべきものと謂わなければならない。

しからば控訴人は前記昭和二十五年一月十日より一箇月以内に本件裁決に対する取消又は変更の訴を提起すべきものであるに拘らず、本訴の提起されたのは、法定期間を経過した同年二月十四日であることが記録上明白である。從つて本訴は出訴期間経過後になされた不適法のものであるから、本案に関する判断を俟つまでもなく、これを却下すべきものとする。

さればこれと同趣旨に出でた原判決は相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却すべきものとし、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条に則り主文の如く判決する。

(裁判官 渡辺葆 浜田潔夫 牛山要)

(目録省略)

名古屋高裁金沢支部 昭和24年(ネ)12号の原審判決の主文および事実

一、主  文

石川県鹿島郡豊川村農地委員会が別紙目録記載の農地に対し昭和二十二年十一月十九日に定めた買收計画並びに同年十二月三日に定めた山崎兵太郎への売渡計画はいずれもこれを取消す。

被告が右買收並びに売渡計画に関し原告より申立てた不服の訴願につき昭和二十三年二月十三日になした訴願の申立は相立たない旨の裁決はこれを取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告代理人は主文同旨の判決を求め、その請求原因として「訴外石川県鹿島郡豊川村農地委員会は、昭和二十二年十一月十九日、原告の所有地である別紙目録記載の農地を、昭和二十年十一月二十三日現在における事実に基き、自作農創設特別措置法第三条第一項第一号に規定する「農地の所有者が其の住所のある市町村の区域外において所有する小作地」すなわち不在地主の小作地であると認定しこれを買收する計画を定め、更に同年十二月三日右農地の小作人山崎兵太郎に売渡す計画を定めた。原告は右買收並びに売渡計画について異議の申立をしたところ同委員会は却下したので、原告は更に被告に不服の訴願をしたが被告は昭和二十三年二月十三日訴願相立たない旨の裁決を下した。しかしながら原告は昭和二十年十一月二十三日現在において、その住所を肩書地に有するものである。即ち原告は当時妻子と共に肩書地に居住して農耕に從事し昭和二十年度における供出来も完納する等充分その成績をあげ、右農地に対する公租公課ならびに村民税も原告の名義で納入し來つたものであり生活の本拠は右肩書地にあるものである。斯様な理由で訴外豊川村農地委員会の前記買收計画は不在地主でない原告を不在地主として取扱うものであつて違法であり、これに基く前記売渡計画及び右買收並びに売渡計画を支持して原告の訴願を却下した被告の裁決は、いずれも違法である。故に右各行政処分の取消を求めるため本訴に及んだものである」と陳述した。(立証省略)

被告代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、答弁として、原告の主張事実中訴外豊川村農地委員会が原告所有の別紙目録記載の農地につき原告主張の様な買收売渡の各計画を定めたこと、原告がこれに異議を申立て右委員会が却下し原告が被告に対し不服の訴願をし、被告はこれに対し原告主張の様な裁決をしたことはいずれも認めるがその余の原告主張の事実は否認する。原告の住所は昭和二十年十一月二十三日現在において肩書地にはなく、大阪府北河内郡住道村にあつたものである。即ち、原告は昭和十九年に右の地に寄留届をなして同地で自己の大工職に從事し、同地で生活必需物資の配給を受け、昭和二十年十一月二十三日現在において同地で妾とその子一人と共に居宅を構えて居り、昭和二十一年十二月五日に至り始めて肩書地に転入したもので、その間肩書地においては昭和二十、二十一年度の供出割当にあたつて保有人員に加えられず、右両年度の農業人口調査には不在者として取扱われ、昭和十九、二十年度の豊川村選挙人名簿にも登載されていない。以上の事実より原告の生活の本拠は肩書地になく、大阪府の住居にある事は明である。從つて豊川村農地委員会が原告を不在地主として取扱つた事につき何等違法はなく同委員会の前記買收並びに売渡計画及び被告の裁決はいずれも適法であつて原告の請求は理由のないものであるとのべた。(立証省略)

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