大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(ネ)1491号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事實)

控訴人を債権者とし、被控訴人を債務者とする不動産仮処分命令申請事件において、東京地方裁判所は本件係爭建物につき、債務者の占有を解いて執行吏の保管に付し、執行吏はその現状不変更を条件として債務者にその使用を許すべく、債務者はこの占有を他人に移転しまたは占有名義を変更してはならぬ旨の仮処分決定をしたところ、債務者(被控訴人)は民事訴訟法第七百五十九条にもとづき右仮処分命令の取消の申立をした。原審は右申立事件において、原決定の現状不変更を条件とする使用許可の部分に、但書として「申立人(被控訴人)が右建物を店舖兼居室として使用するに必要な限度で造作の変更改装工事をすることを許さなければならぬ。」との文言を加え、その他は原決定のまゝとする趣旨の判決をした。控訴人(被申立人)はこれに対し控訴し、(一)被控訴人は特別の事情あることを理由として仮処分決定の取消を求めているのに、原審は右仮処分の内容を変更する判決をした。これは全く別個の仮処分決定をなしたものであつて、民事訴訟法第七百五十九条に反する違法の判決である。(二)前示但書の文言は本文の部分と共存することのできぬ矛盾撞着に陥つており、控訴人の本件建物に対する現状不変更の仮処分申請の趣旨は沒却せられる。との各理由によつて原判決の取消を求めた。

(判斷)

控訴棄却。即ち、控訴審は、当初の仮処分命令執行の当時本件建物の状態が屋根と柱、外壁の存するのみであり、そのまゝでは被控訴人が起居困難の程度であること及び同人が従來本件建物でその主張のような営業を営んでいたことを認定し、控訴人の前示主張に対し次の通り判示している。

このような特別の事情の存するとき、必ず全部の取消をなさねばならぬものではなく、特別事情の程度によつて必要と認められる一部の取消をもなし得ることは、仮処分異議の申立があつた場合に準用せられる民訴第七百四十五条第二項の趣旨から類推しても明らかなことである。本件の場合においては原判決のように現状不変更の条件の例外として、被控訴人が本件建物を店舖兼居宅として使用するに必要な限度で造作の変更改装の工事をすることを許すのを相当と考える。これは当初の仮処分決定と別箇の仮処分決定をなすのではなくて、実質は一部の取消であり、前示の如く民訴第七百五十九条によつて許し得るところである。

次に右の但書は本文の現状不変更という条件をこの程度において一部取消す旨を言い表わしたものに外ならず、別段これと矛盾することなく、又前示の「必要の限度」という字句は執行吏が執行に際し申出があつた場合に許容し得る限度を示すに足るものであつて、本件建物の所在する場所的環境、被控訴人の営業の種類規模、被控訴人の同居の家族の状態、その他諸般の情況から客観的合理的に社会通念上認定することができる筈のものである。もしその必要限度を超えて工事をすることを執行吏が許容したとせば、民訴第五百四十四条によつて別に救済の途があり、執行吏の許容を超えて被控訴人が工事をしたとせば、仮処分決定に定めた条件違反の問題が起るのであつて、このようなこともあり得るからといつて、原判決に前記工事を許容する但書があることが違法であるとはいえない。

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