大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(ネ)53号 判決

被控訴人(原審原告)代理人は、適式の呼出を受けながら、昭和二十五年九月二十日午前十時の当審における本件口頭弁論期日に出頭しないが、同人が当審において提出した答弁書、昭和二十五年二月十四日附準備書面同年八月十日附準備書面並びに当審において控訴代理人が陳述した原審口頭弁論の結果によれば、被控訴人は本件控訴を棄却すとの判決を求め、本訴の請求原因として主張するところは、原判決事実摘示の通りであるから、茲にこれを引用する。なお控訴人の主張に対しては、第一、被控訴人が本訴を提起した相手方たる被告は、訴状及び訴状訂正書の記載で明白なように、株式会社峯吉商店であつて、株式会社峯吉商店ではない、原審判決もまた、被告を株式会社峯吉商店としたものである。故に該被告と人格を異にする控訴人には控訴を爲すの適格なく、本件控訴は却下せらるべきである。第二、本件賣買の目的物たる胡麻は胡麻塩、七味唐辛子、脂油を作るに用うるものであつて、調味料であるから、胡麻の買入は株式会社峯吉商店の登記簿に記載せられた目的の一、二にある調味料販賣に附帶する一切の業務に該当するものである。從つて本件賣買取引は株式会社峯吉商店の目的の範囲内の行爲であると陳述した。<立証省略>

控訴代理人は、原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却す、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とすとの判決を求め、本訴請求原因事実に対する答弁として、控訴人の営業が食糧品、雜貨の卸賣業であることは認めるが、その余の被控訴人主張事実は全部否認する。本件取引は控訴人とは別に存在する株式会社丸ト峯吉商店との間の取引であると述べた。<立証省略>

三、理  由

本件記録を調査してみると、被控訴人(原審原告)は、訴状及び昭和二十四年十一月十四日附訴状訂正書に、被告を札幌市大通東二丁目八番地株式会社丸ト峯吉商店(尤も「丸ト」をと表示してあるが、これは当裁判所が眞正に成立したものと認める乙第四号証の一即ち同会社登記簿謄本に照らし、「丸ト」と正確に記すべきを略記したものと認める。以下同じ)と表示し、訴状及び当審で提出された昭和二十五年八月十日附準備書面の記載並に被控訴人が成立に爭なき甲第一乃至第四号証を提出している趣旨からみれば、本訴の請求原因は、被控訴人は昭和二十三年十一月中右株式会社丸ト峯吉商店に、その主張の如き約旨で、黒胡麻一石二斗を賣渡したから、約旨に從いその代金及び荷造費、送料の合計金一万一千四百円及び本件訴状送達の翌日以降完済に至るまでの年六分の割合による損害金の支拂を求めるというのであるが、前記訴状には被告会社の代表者を取締役社長峯吉満太郎と表示したのに拘らず、原審裁判所の発した被告代表者の資格証明追完の補正命令に対し、右峯吉満太郎の資格証明の追完を爲さず、前示被告会社と同所同番地にある株式会社峯吉商店の登記簿抄本で会社を代表すべき取締役が峯吉一郎と記載してあるものを提出し、同時に前記訴状訂正書を以つて、被告代表者の表示を取締役社長峯吉一郎と訂正した。これがため本件訴状、同訂正申立書及び昭和二十四年十二月十四日午前十時の原審における最初の口頭弁論期日の呼出状は、右峯吉一郎宛に送達せられた。ところが前記乙第四号証の一によれば、この峯吉一郎は被告会社の取締役の一人ではあるが、同会社を代表すべき取締役は、被控訴人が初めに訴状に表示した峯吉満太郎一人のみであることが認められるから、本件訴状は適式に被告会社に送達せられたものではない。然らば、原審は最初の口頭弁論期日に訴状不送達の被告不出頭のまま弁論を終結したという違法な手続の下に、判決を言渡したことになる。

しかも原判決の当事者の表示には、被告として札幌市大通東二丁目八番地株式会社峯吉商店、その代表者として訴状訂正書通りの取締役峯吉一郎を表示してあるが、当裁判所が眞正に成立したものと認める乙第四号証の二(株式会社峯吉商店登記簿謄本)及び乙第五号証(商店二戸並列の写眞)によれば、この株式会社峯吉商店なるものは、昭和二十三年一月二十九日に設立せられ、被告と同所同番地に荒物雜貨藁工品の卸小賣業を営む店舗を有し、代表取締役が峯吉一郎である。被告とは別個に実在する株式会社であることが認められる。(被告会社は本件取引前たる昭和二十三年八月二十八日に設立せられていること、前記乙第四号証の一及び甲第四号証により明らかである。)然らば前示原判決の被告の名称及びその代表者の表示に対しては、單なる明白なる誤謬として、更正決定を爲し得べきものではない。被告に非ざる者に判決が言渡され且つ送達されたことになる。そこで若しこの誤つた判決でも、そのまま確定すれば、被告として表示された者が執行を受ける虞れも存するのであるから、その者は該判決に対し控訴する利益があるものといわなければならない。(この点につき、本件控訴人はその適格なく控訴は却下せらるべきだという被控訴人の主張は採用しない。)即ち本件控訴は適法である。

以上の次第により、原判決には法律の違背があるから、民事訴訟法第三百八十七條によりこれを取消し、また本件は訴状がまだ送達されていない状態にあるとみるべきこと前示の如くであるから、なお弁論を爲す必要あるが故に、民事訴訟法第三百八十九條第一項によりこれを原審に差戻すべきものとし、主文の如く判決する。

(裁判官 斎藤直一 藤江忠二郎 猪俣幸一)

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