大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(ネ)720号 判決

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人に対し昭和二十二年度所得額更正決定(所得金額五万円、増加する税額一万二千八百七十円、加算税額二百十二円、追徴税額一万三千八十二円)を取消すべし。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、控訴人が本件所得額更正決定の通知書を受領したのは昭和二十二年十二月二十四日若しくは同月二十五日であるから、これに対する審査請求は適法なる期間内になされたものである。また控訴人は被控訴人主張の如く、該審査請求を取下げたことはないと述べ、被控訴代理人において、右更正決定通知書はその日附である昭和二十二年十一月二十五日に発送せられたものであるから、遅くとも同月二十七日までには控訴人に到達したものであると述べた外、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。(立証省略)

三、理  由

被控訴人は昭和二十二年十一月二十五日附更正決定通知書により、控訴人に対して、昭和二十二年度における同人の所得額を金五万円、その税額を金一万三千八十二円四十銭と更正する旨を通知した事実並びに控訴人が右更正決定は違法であるとして、昭和二十三年一月十九日被控訴人を経由して東京財務局長にこれが審査請求をなした事実は、本件当事者間に争いがない。

しかるところ、所得税法第四十九条第一項によれば、政府のなした所得金額の更正決定に対する審査請求は、納税義務者が右更正決定の通知を受けた日から一箇月以内に、しなければならないものとせられているから、右期間経過後になされた審査請求は、已むことを得ない事情のない限り、不適法であると解すべきものとする。

よつて本件において控訴人のなした審査請求の適否について判断する。

右更正決定が昭和二十二年十一月二十五日附を以て通知されたことは前述の通りであつて、当審証人安藤寛静の証言によると、右更正決定の処分をなした武蔵野税務署においては、納税義務者に対する昭和二十二年度の所得額更正決定の通知書は、同年十一月十八日より同月二十五日までの間に全部作成し、その作成と同時に直ちに発送の手続をとつたものであつて、同月二十七日までには全部郵便に付してその発送を完了したものである事実が認められる。右認定を覆すに足る確証はない。従て本件更正決定通知書も遅くとも昭和二十二年十一月二十七日郵便に付して控訴人に発送されたものと認むべきである。

而して前記武蔵野税務署が東京都武蔵野市に所在し、また控訴人が東京都北多摩郡久留米村に居住することは記録上明かであるところ、当時東京都内においては郵便物は通常の場合、二、三日を出でずして名宛人に到達していることは、顕著な事実であるから、右更正決定通知書が叙上の如く、昭和二十二年十一月二十七日に発送されたとしても、特段の事情の認められない限り、遅くとも同年十一月末日までには控訴人に到達したものと認むべきである。控訴人は当審における本人訊問において、右更正決定通知書を同年十二月二十五、六日頃受領した旨を供述しているけれども、原審における控訴人本人訊問において、同人は右更正決定通知書の到達した日時は知らないと、供述している点から考えると、当審における右控訴人本人の供述は信用できない。またこの点に関する当審証人石田隆治の証言もにわかに措信するに足りない。その他控訴人の提出援用にかゝる各証拠によるも、前示認定を飜し、右更正決定通知書の到達が同年十二月二十四、五日であるとの控訴人の主張事実を明認することはできない。

従つて本件審査請求は、更正決定通知書が控訴人に到達した昭和二十二年十一月末日より一ケ月の法定期間経過後である昭和二十三年一月十九日になされたものであつて、しかも控訴人が右期間内に審査請求をしなかつたことについて、已むことを得ない事情があつたものであると認むべき資料はないから、控訴人の右審査請求は不適法であるといわなければならない。

しかるところ、所得額更正決定を違法であるとして、これが取消を求める訴は、審査の決定を経た後でなければ提起できないことは、所得税法第五十一条第二項の規定に徴して明かであるから、右審査請求にして不適法である以上、本訴は結局審査の決定を経ないで提起されたものに帰し、従つて本訴はその訴提起の要件を欠き不適法であると判断する。

しからば本訴を不適法として却下した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条に則り、主文の通り判決する。

(裁判官 渡辺葆 浜田潔夫 牛山要)

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