大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(ラ)312号 決定

一、当事者

抗告人 石○一郎

二、主  文

本件抗告を棄却する。

三、理  由

本件抗告理由の要旨は、

一、本件準禁治産宣告申立人は抗告人の実母であるが、同人が本件申立をなすに至つた動機は、一時の感情に駆られた結果であつて、その真意に出でたものではない。

二、抗告人は昭和二十年一月五日前戸主父○一の死亡により家督相続をしたのであるが、相続後抗告人の努力によつて資産は幾分増加しており、申立人主張の甘藷先売代金として受取つた金三万五千円その他の金員は、抗告人の経営する土木建築請負業のため、人夫賃の支払その他の投資に充てたもので遊蕩に費消したものではない。

しかるに原裁判所は申立人の真意を察知せず、また前記金員の使途を究明することなく、抗告人を浪費者として準禁治産宣告の審判をしたのは失当であるから、原審判を取消し、本件を原裁判所に差戻す旨の裁判を求めるというにある。

よつて按ずるに、

一、本件申立人が抗告人の実母であることは本件記録編綴の戸籍謄本によつて明らかであるが、本件申立が申立人の真意に出たものでないとの点については、これを疎明するに足りる資料がないから抗告人の右主張は採用することができない。

二、抗告人が昭和二十年一月五日前戸主父○一の死亡によつて家督相続をしたことは右戸籍謄本に徴して認めえられるけれども、抗告人が相続後その資産を増殖したこと及び甘藷先売代金その他の金員を、その経営する土木建築請負業のための人夫賃の支払、その他の投資に充てたものであることについては、原審における抗告人本人審問の結果はたやすく信用しがたく、当審における椎○次郎審問の結果によつてもこれを疎明するに足りないから抗告人の右主張も採用の限りでない。

却つて本件記録編綴の準禁治産宣告申立書、調査復命書並びに原審証人江○○助、石○なかの各証言、前掲椎○次郎、原審における申立人石○志○の各審問の結果を綜合すれば、抗告人は田畑約一町五反歩、住家一棟(建坪四十坪)外非住家二棟を所有し、申立人、祖母、妻子等七人の家族を擁する自作農であるが、昭和二十二年十一、二月頃から八日市場町「○○」喫茶店主近○はなと情交関係を生じ、昭和二十三年八月頃からは右はな方に同居して一時土木建築請負業を営んでいたが、多額の借財をなし一向その家庭を顧みないのみか、時折実家に戻つて来ては金品を持出して、はなとの遊興に費消し、殊に昭和二十四年五月頃には申立人や妻なか等が丹精して移植したばかりの甘藷の収穫を見越して、澱粉工場に甘藷の先売契約をして金三万五千円を受取り費消し、同年六月頃には妻なかが自己の箪笥に保管中の金一万円を、同年八月中には祖母す○所有の金六千円を無断持出して費消し、昭和二十五年八月中旬頃には申立人に対し金七万円の提供方を要求したが、これを拒絶されたところから同月十四日夜家族の不在に乗じ妻なかの箪笥を破壊して同人等の衣類七十数点を持出し他に売却し、同月末頃その金を携えてはなと東京都方面に出奔し、現在東京都○○駅南口マーケツトにおいてはなをして酒場を経営せしめ抗告人は某会社の古鉄買集めの外交をしていることが認められる。右認定に牴触する前掲抗告人本人審問の結果は措信しない。

そうだとすれば抗告人は更にその所有の不動産を処分して右はなとの遊蕩生活に費消し、その一家を非境に陥入らしめないとも限らないから、原裁判所が抗告人を浪費者と認めて準禁治産宣告の審判をしたのは相当というべきであり、その他記録を精査するも原審判には何ら違法の点が認められないから、本件抗告を理由のないものとしてこれを棄却すべきものとする。

よつて主文のとおり決定する。

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