大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和25年(新う)16号 判決

刑事訴訟法第三百三十五条にいう法令の適用を示すとは、単に法令を羅列することではなく、認定した各犯罪事実に法条を擬律し、若し刑の加重減軽の事由あるときはその法令の根拠を示し、結局如何なる刑期又は金額の範囲内において処断するのであるかを理解し得る程度に明示することを要するのであるが常に必ずしもその法令の順序、関係を明らかにし、逐一説明的に記載することを必要とするのではなく、どの犯罪事実にどの法令が適用され、如何なる法定刑によつて処断したかを理解し得るように法令を掲記するを以て足るものと解すべきである。本件において原判決をみると、罪となるべき事実として起訴状記載の公訴事実を引用し、法令の適用として生方進について、刑法第二百三十五条、第四十五条、第四十七条、第十条、麻薬取締法第三条第一項、第五十七条、刑事訴訟法第百八十一条第一項と掲記しているが、起訴状には、同被告人に対する公訴事実として、第一に大槌信義当二十二年と共謀して、昭和二十四年六月四日午前零時三十分頃川口市錦町六十番地関口誠方で同人所有のオーバー一点外衣類等三十三点を窃取した事実、第二の(ロ)として、同被告人が麻薬取扱者でなく、また法定の除外事由もないにも拘らず、昭和二十四年五月中旬頃から同年同月二十六、七日頃までの間鈴木大三方及び川口市仲町二丁目三千二百七十番地生方清方に、塩酸モルヒネ〇、〇〇一瓦錠剤五個を蔵置してこれを所持していた事実が記載されている。かように原判決において認定した同被告人の犯罪事実は、一回の窃盜と一回の麻薬不法所持であるから、これを前記法令の適用の記載と照合すると、窃盜の行為には刑法第二百三十五条を、麻薬不法所持の行為には麻薬取締法第三条第一項、第五十七条第一項をそれぞれ適用し、後者については懲役刑を選択し、刑法第四十五条、第四十七条、第十条により、右窃盜と麻薬取締法違反の罪とを併合罪として重い窃盜罪の刑に従つて処断したことが右記載自体により明瞭にこれを理解することができる。故に原判決の法令の適用の記載方法は前敍の理由により敢て前記刑事訴訟法の規定に違反するものとは認められないから論旨は理由がない。

(註 本件は量刑不当により一部破棄自判)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!