大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)1856号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(爭点)

被告人は、甲裁判所の二五・四・二二の第一判決において二四・六・四の進駐軍部隊におけるマニラロープの窃盜により懲役一年(四年間執行猶豫)に処せられた。同裁判所は二六・二・二二第二判決において二三・一二・二〇の右A部隊におけるマニラロープの窃盜、二三・一〇下旬のA部隊より盜んだペンキの贓物牙保により懲役十月及び罰金千円に処した。そして第一判決当時検察官の下に既に第二判決の犯罪事実は判明しておりその犯罪の共犯者はいずれも執行猶予が起訴猶予になつている。そこで第二判決において執行猶予を附し得ないかが問題となつた。

(判旨)

再度の執行猶予を言い渡すことの可否について按ずるに、一方に於て刑法第五十五条の連続犯の規定が廃止され、他方新刑事訴訟法の施行によつて犯罪の搜査が従来に較べて幾多の制限が加えられ身柄勾留の場合には早急に起訴不起訴を決定しなければならなくなつた結果、従来ならば余罪の搜査も十分した上起訴され刑法第四十五条前段の併合罪又は連続犯として一括して審判されていたような場合においても、単にその時の情況に従い別個に起訴される傾向となり後の犯罪が前の犯罪より先に起訴され審判されることも多くなつて来た。かような場合従来の刑法第二十五条第二十六条の解釈に従えば、第一の判決において執行猶予の言渡があつても、第二の判決においては、たとえ、その犯罪が第一の判決で認められた犯罪以前のものであつても、再び執行猶予の言渡をも取り消さなければならないこととなる結果偶然の事情で別個に起訴されたために如何に執行猶予を附するに足りる情状が具備していてもかかる者に対して執行猶予の恩典を全然奪い去るに等しい意外な不当の効果を生ずるに至りこの制度を設けた趣旨を沒却することになり、同時に審判されて居れば当然に執行猶予が云い渡されたであろう場合に比較して著しく不均衡を生ずる。本来執行猶予制度の精神から云えばその条件を法定しないで総て裁判官の裁量に委せるのが相当であるが、この点は暫くおき、前述のような場合即ち刑法第四十五条後段の併合罪の関係にある場合には尠くとも以上の不都合を救済し不均衡を是正する意味において刑法第二十五条にいわゆる「刑ニ処セラレタル」を狹く実刑に処せられた意味に解し、叙上の者に対しては第二の判決において情状によつては再度の執行猶予を与えることができるものと解するを相当とする。

(説明)

この問題が特に論議されだしたのは、新刑訴が施行される当時施行法第四条が新法による手続と旧法による手続とを公訴の提起によつて区別したことに始まる。当時併合罪の関係にある犯罪が偶然新旧両手続にわかれて起訴されそれが併合不可能であるから、併合されて審判されたら執行猶予ともなり得る事案が、偶然のことで分離されて審判されたためにそれが附し得ないとすれば余りにも権衡を欠くという観点から問題が提起され最高裁刑事局長通知は積極説を採つた。(二四・七・一九、最高裁刑二第一〇八八三號及び二四・九・三〇回答參照)法の解釈としては積極説は弱点があり窮極としては立法に俟たなければ各関係法条を統一的に矛盾なく解釈できないかも知れない。各高裁の判例も目下の所積極説消極説相対立しているのが現状であり、この点についても最高裁がいずれか決定しなければならない立場にある。

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