東京高等裁判所 昭和26年(う)2251号 判決
告訴、告発を訴訟条件とする犯罪事実について公訴を提起する場合、告訴状、告発書等の書面を起訴状と共に裁判所に提出しなくとも、其の告訴、告発の存する以上、該公訴提起の手続を其の規定に違反するものとして無効なりと為し得ないことは刑事訴訟法第二百五十六条、 第三百三十八条の解釈上洵に明白であるから、該公訴を受理したことを目して不法なりとは到底謂い得ないのみならず、被告人並に弁護人に於て第一審の第一回公判期日前予め関係書類を閲覧し告訴、告発に関する書類の有無乃至は瑕疵等を知る機会の与えられて居る以上、右書類の裁判所に顕出せられる以前裁判所に於て検察官の起訴状朗読その他の訴訟手続が遂行されても、被告人の権利保護其の他に何等欠くるところなく更に訴訟手続上に於ても亦何等の支障がないのであつて、之を違法なりとは解し難い。翻つて、本件記録について之を観ると、本件起訴状に告発書の添付されて居ないことは所論の通りであるが、右起訴前である昭和二十六年一月二十五日に柏崎税務署収税官吏大蔵事務官阿部清が新潟地方検察庁柏崎支部検察官に対し国税犯則取締法第十三条第一項第二号に基いて直接、本件酒税法犯則事実の告発を為して居ることが明らかであるから、原審が右公訴を受理したのは洵に適法であり、更に右告発書が原審第一回公判廷に顕出される以前検察官が起訴状の朗読を為したことは所論の通りであるが、右を目して其の手続違法なりと解し難いこと前説示の通りであるから、以上の点に関する論旨は何れも理由がない。
(註 本件は法令適用の誤により破棄自判)