大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)2328号 判決

原判決がその判示第二の(一)において認定した前示内山幸三に切創を負わしめた事実については、最初、原審検察官は、被告人長谷川単独の殺人未遂として、同被告人のみを起訴し、被告人森田に対しては、該事実につき起訴しなかつたところ、その後、原審第一回公判廷において、右犯行は、被告人長谷川、同森田両名の共謀に出たものであるとして、被告人森田に対しては、訴因、罰条の追加の形式によつて、これが審判を求めたものであることが認められるのである。而して刑事訴訟法第三百十二条第一項には「裁判所は検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加撤回又は変更を許さなければならない」と規定しているのであるから、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更等は、もとより公訴事実の同一性を害しない程度においてのみ許されるものであつて、起訴状に公訴事実として記載している事実と全く別個の事実であつて、起訴状に全然記載していない事実については訴因、罰条の追加又は変更は許されないものと解すべく、従つて、検察官が、被告人に対し、起訴状に公訴事実として、全然記載しなかつた事実につき、裁判所の審理を求めるためには、必ずや、追起訴の手続を践むことを要し、単に、公判廷における訴因罰条追加の形式によることは、法律上これを許さないものと言わなければならない。してみれば、前示のように、原判示第二の(一)の事実につき、被告人森田に対しては、最初、起訴状によつて起訴しなかつたものであることの明らかな本件においては、検察官は、同被告人に対し、右の事実について、訴因罰条の追加の形式によつて、審判を求めることは、法律上許されないものと言うべく、従つて、検察官の請求により、これが追加を許した原審の訴訟手続には、この点において法令の違反があり、この違反が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反があるものと認むるの外なく、なお、同被告人に対する関係においては、前示殺人未遂の公訴事実については、公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるときに該当するものと言うべきであるから、結局、審判の請求を受けなかつたことに帰するものと言うべく、従つて、これについて審判をした原判決には、審判の請求を受けない事件について判決をした違法があるものと言わなければならない。よつて、原判決中、被告人森田に関する部分は、以上いずれの理由よりするも、到底破棄を免れない。

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