東京高等裁判所 昭和26年(う)2516号 判決
昭和二五年七月五日附の本件起訴状の記載によればその公訴事実は被告人が所論総合計金百二十五万六千百七十円を業務上神奈川県高座地方事務所等において保管中昭和二四年八月三日頃から同二五年五月二四日頃までの間に藤沢市内の料亭その他で擅に遊興費等に費消したことになつており、昭和二五年七月七日附本件起訴状によればその公訴事実は被告人が所論総計六十三万八百四十円を神奈川県支金庫及び藤沢市金庫へ納入すべく業務上保管中昭和二四年一〇月頃から昭和二五年五月頃迄の間に藤沢市内、熱海、伊東及び東京都内銀座、新宿、浅草等において、右金額中五十二万九千九十円を擅に自己の遊興費等に費消したことになつておる。而して右の記載によると被告人は意思を継続して一定の期間同種行為を一定の場所等において反覆したことが明白であるから、右の事実はいずれも包括一罪を構成するものと解するを相当とする。右各起訴状に罪名を業務上横領と、罰条を刑法第二五三条と記載せるところより見ると起訴検察官の意見も亦これと同様であつたと解せられる。而して右の記載は訴因を明示して公訴事実を記載したものと謂わなければならない。先ず、右各一罪についてはその行われた日時も方法も具体的に記載せられており、その行われた場所も大部分具体的に記載せられている。ただその場所の一部分が明示せられていないけれども、既にその大部分が明記せられている以上本件一罪の行われた場所も、本件公訴事実の状況から見ればできる限りにおいて特定せられたものと謂うべきである。従つて本件公訴の提起は毫も刑訴法第二五六条に違背しない。原判決には所論違法は一も存せず、論旨は理由がない。