東京高等裁判所 昭和26年(う)2747号 判決
按ずるに原判決は、被告人が政府の免許を受けないで、原判示第一及び第二の各醪の製造をした事実と、原判示第三の焼酎製造の準備をした事実とを認定し、右各醪製造と焼酎製造の準備の各所為とがいずれも一個の行為で二個の罪名に触れるものとして刑法第五十四条第一項前段、第十条を適用してそれぞれ重い後者の罪の刑に従い、且つ、これを刑法第四十五条前段の併合罪として同法第四十七条、第十条を適用して処断していることは明かである、然しながら、原判示第三の準備罪と原判示第一及び第二の製造罪がそれぞれ一所為数法の関係にあるならば、たとえ処断上いずれも重い後者の罪の刑に従うべき関係にあるとしても、原判決認定のとおり焼酎製造の準備行為は一個であり、これと一所為数法の関係に立つ醪製造の所為も結局一個の行為として処断すべきものであつて、併合罪の関係に立つものと解すべきではない。然るにこれを各醪製造の二罪として刑法第四十五条前段、第四十七条、第十条を適用した原判決はこの点において法令の適用を誤つた違法があるものと謂うべきである。
而して原判決挙示の証拠によれば、被告人は原判示第一の醪を仕込んだ後これが醗酵したので、原判示日時場所において原判示第三掲記の煮沸器の中に入れ、火を炊き付けて蒸溜にかかり、以て焼酎の製造行為に着手したかの如き事実が窺われる。若し事案の真相がそうであるならば、原判示第一と第三の事実は合して一個の焼酎製造の未遂行為として原判示第二の醪製造の所為と併合罪の関係にあるものとも解し得られるのであつて、或は訴因変更の手続に従つた上このように認定するのが事案に則しているのではないかと考えられる。少くとも原判決のように認定することは些か事案の真相に添わない嫌があり、この意味において原判決には事実誤認の疑もある。
以上説示のとおりであつて、これらの違法は判決に影響を及ぼすことが明かであるから、原判決は破棄を免れない。それゆえ本件控訴は理由あるに帰する。