大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)2769号 判決

隠匿物資等緊急措置令第一条は同令施行の際同令別表に掲げた物資(いわゆる調査物資)を所有し又は占有するものは、同令施行の日(即ち昭和二十一年二月十七日)において所有し又は占有する調査物資につき所定の事項を記載した報告書三通を昭和二十一年三月十日迄に当該物資の所在の場所を管轄する地方長官を経由し商工大臣に提出すべき旨を定め、但しその所有し又は占有する調査物資の数量が所定の数量に満たないものについては右義務を免除している。しかして右規定に違反し報告書の提出を怠つたものについては、同令第十条にその処罰規定を設けているのである。

従つて同令第一条所定の報告書を提出すべき者がこれを怠り所定期日までに報告書を提出しなかつたときはここに同令第十条所定の犯罪が成立することは勿論であるが、右犯罪はいわゆる真正不作為犯であつて且つ所定の調査物資を所有し又は占有する者の報告書を提出すると云う作為義務違反を対象とするものであるから、右期日以後においても右作為義務が消滅しない限り、犯罪は継続するいわゆる継続犯の性質を有するものと云うべく、期日徒過と同時に作為義務は消滅し犯罪は既遂に達し、その時から公訴時効が進行するものと解すべきではない。

今本件について見るに、前記隠匿物資等緊急措置令は現在もなお有効に存続し本件物資は依然同令にいわゆる調査物資に指定せられているものであつて、且つ本件記録によれば被告人は同令施行以来本件起訴の直前である昭和二十五年四月十五日頃まで引続き所定数量以上の本件調査物資を所有していたことが明らかであるから、被告人の報告書を提出すべき作為義務は右届出期日を経過した後も消滅せず公訴時効は進行しなかつたものと認めるのが相当である。原判決の説示するところは畢竟以上と同趣旨に帰するものと解せられるから何等法令の解釈並びに適用を誤つた違法はなく論旨は理由がない。

同第三点について。

(中略)

被告人の公判廷における自白は錯誤を理由として無効を主張し又はこれを取り消すことを得ないものと解すべきものであり、且つ記録に徴するも右供述が任意になされたものでない疑があるとは認められないからこれを証拠に供した原判決には所論のような違法はなくこの点に関する論旨もまた理由がない。

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