大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和26年(う)3067号 判決

昭和二二年五月二日勅令第二〇七号外国人登録令附則第二項、第三項、同令第四条、第一二条第二号の趣旨につき按ずるに、昭和二四年一一月一日法務府民事第二四九一号(六)一五九号法務府民事法務長官、法務府刑政長官連名の各都道府県知事宛の通牒によると、未登録の外国人から登録申請があつたときは適法な入国、出生、婚姻による外国人である身分の取得等のあらたな事由に基づく場合を除いて登録申請を受理しない旨(同通牒第二項第一号)並びに只都道府県知事の退去命令又は退去の強制処分がなかつた場合に限り市町村長は所轄検察庁からその旨の通知を待つて,登録の申請を受理すべき旨(同第四号)を定めているので、右外国人登録令附則第二項により同令施行の際(昭和二二年五月二日)現に日本に在留する外国人が同令施行の日から三〇日以内に登録の申請をしなかつた場合にはその後所定の登録の申請をしても右通牒第二項第四号の検察官からの通知がない限りは受理されないのである。従つて昭和二二年五月二日から三〇日を経過した後には右のような外国人は(同令施行後正式に入国した外国人は六〇日を経過した後も同様)登録申請の義務があるとしてもこれを履行することはできないのである。さて継続犯は犯罪既遂後も違法状態の継続中は実行行為も継続しているとみるべき場合で、公訴時効は実行行為終了のときから進行するのである。そして不作為犯たる継続犯の場合においては作為義務消滅の時から、はじめて公訴時効は進行するのであるが、それは作為義務が履行可能であることを前提とするものと解すべきである。その不可能な場合にも義務があり、その不履行を犯罪の実行行為と解することは責任の本質を非難可能性とみる道義的責任を基盤とする刑法の解釈として許されない。この見地から考えると同令に定める登録不申請罪は少くとも公訴時効期間の起算点の問題については右所定期間を徒過したことにより既遂となると同時に犯罪実行行為は終了するものと解し、その時から公訴時効は進行するものとするを相当とする。この見解は適法に登録した者が登録証明書不携帯罪に問われることがあることや、登録替の不履行の場合の責任などのことから考えると不合理のようであるが、これは道義的責任を基盤とする刑法の根本理念からは避け難い不合理であつて、この不合理を解消するには登録期間経過後も登録申請を受理するような措置を採るべきである。なお反対説によると本罪については既遂後数十年経過しても公訴時効は完成しないという結果になることも考慮すべきである。

ところが本件記録によれば本件公訴が提起されたのは昭和二二年五月二日から三〇日の期間を経過した同年六月一日から起算して三年の公訴時効が既に完成している昭和二五年六月一日以後である昭和二六年四月三〇日であることは明白であるから、本件は已に公訴時効の完成したものである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!