東京高等裁判所 昭和26年(う)3638号 判決
しかし所論の前進座の公演が日本共産党の五千万円資金カンパのため行われたものであるにせよ又同党の文化活動の一環としてなされ営利の目的がなかつたにせよ、原判決の挙示の証拠によつて十分認められるように本件は一人あたり金六十円以上の出捐を受けて入場させ観劇させたものであつて事実上有料興行であり、且地方税法においてはその催物が営利を目的とする興業なりや否やを区別することなく入場料を徴収する場合にはその入場料は課税の対象となるものであることは改正前の地方税法第十三条第十四条に徴しても明白であり又有料興行による収入を政治活動の基金にする目的であつたかどうかの点の如きも犯罪の成否には何等の影響もないのである。そして原判決の挙示する証拠によれば被告人が本件犯罪を犯す意思があつたことは優にこれを認めることができるのであつて原審において被告人及び弁護人が、被告人が納税するには日本共産党の合議体の指令がいるのであるから同党の指令のない限り被告人個人としてはどうすることもできないから本件は不能犯であり無罪であるとか被告人には犯意がないから無罪であると主張したとしてもかくの如き主張は単なる犯意又は犯罪事実の否認であつて刑事訴訟法第三百三十五条第二項に所謂法律上犯罪の成立を妨げる理由ではないから原審がこれに対し特に判断を示さなかつたからとて何等違法の点はない。それゆえ論旨は理由がない。