大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)3678号 判決

原判決において昭和二十四年八月五日頃、額面百九十四万八千十六円、振出日同年六月二十八日、振出人及び支払人協和銀行京橋支店なる小切手壱通を村上広雄の使者に交付して横領したとある右小切手は所論公訴事実における村上広雄の使者氏名不詳に擅に手渡した小切手壱通とあるに該当することは、本件各起訴状記裁の各事実と原判決に示されている各事実とを彼此対照して明白である。果して然らば、所論公訴事実には、右一旦手渡した小切手について、即日金九十九万四千百七十六円の返還があつて、被告人は差引金九十五万三千八百四十円を村上広雄に貸付けてこれを横領したとあるに拘わらず原審は敢て右小切手壱通を横領した旨認定したわけである。よつてこれについて考察するのに、右原審認定の事実が右所論公訴事実との間にその同一性を異にするもののないことは、事の態様に照し明瞭であるが、右認定は明らかに右公訴事実より不利益であり、斯かる認定の為されんがためには、先づ、刑事訴訟法第三百十二条所定の趣旨に従い適式な訴因変更の手続を為し、もつて被告人に充分な防禦の機会の与えらるべきであるとするを相当する。そこでこれを本件記録について見のに、訴因変更の手続の為された形式は毫もなく、従つて原審は斯かる手続を経ずして敢て前示の如く被告人の不利益に事実を認定するの過誤を冒したものであつて、この過誤は訴訟手続上の法令に違背し且つ明らかに原判決に影響を及ぼすべきことが明らかであるから、原判決は既にこの点において到底破棄を免かれない。

されば原審が審判の請求を受けない事件について判決をした違法ありとする所論はこれを採用し難いけれども、究極において本論旨は理由あるに帰する。

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