東京高等裁判所 昭和26年(う)3740号 判決
本件記録を調査し、原判決挙示の証拠中、小野坂福次の検事に対する供述調書なる書類を見れば、その供述調書の冒頭には検事大原重道が右小野坂福次を取り調べた旨の記載が存するのに、同調書の末尾には検察事務官小沢正夫の署名押印は存するが、右検事大原重道の署名押印の存しないことは所論のとおりである。しからば右調書は直ちに検事作成の供述調書とは認めることはできない。しかも原審第四回公判調書の記載によれば、被告人及び弁護人がこれを証拠とすることには同意していないことが明らかであるのに、原審がこれを小野坂福次に対する検事作成の供述調書(刑事訴訟法第三二一条第二号の書類)として証拠調をしたのは違法であり、この違法の証拠を判決に援用したのは、まさに訴訟手続に法令違反の存するものであることは明白であり、かつこの供述調書を除けば、原判決事実認定に影響が存するので、その違反は判決に影響を及ぼすものであることは勿論であり、論旨は結局理由がある。原判決は破棄すべきものとする。