東京高等裁判所 昭和26年(う)4153号 判決
本件記録中に昭和二十六年七月十三日附東京地方裁判所刑事第四部裁判長裁判官白河六郎より原審裁判所に宛てた論旨摘録のような記録取寄依頼の件と題する書面が編綴されておることは所論のとおりである。故に原審としては事務処理上差支えなき限り、可及的速かに本件記録を東京地方裁判所刑事第四部に送付すべきであるが、本件においては一方本案の原審判決に対し、昭和二十六年八月十八日原審弁護人より次で同月二十一日被告人よりそれぞれ控訴の申立があり、当裁判所に繋属することとなつたのであつて、一箇の訴訟記録を本案の控訴審たる当裁判所と、原審の保釈取消保証金没取決定に対する異議申立事件の管轄裁判所たる東京地方裁判所において、裁判上必要とするに至つたのである。かかる場合には原審としては通常最初に不服申立のあつた東京地方裁判所に本件記録を送付することが順序であろうけれども、控訴の申立があつたときは、その申立が明らかに控訴権消滅後にされたものである場合を除いては、第一審裁判所は公判調書の記載の正確性についての異議申立期間の経過後、速かに訴訟記録及び証拠物を控訴裁判所に送付しなければならない(刑事訴訟規則第二百三十五条)のであつて訴訟の迅速処理の必要上相当と認めるときは、本案の控訴裁判所に記録をさきに送付しても何等違法ではない。
原審が本件記録を東京地方裁判所に送付する前に、当裁判所に送付したかどうか本件記録では明らかでないが、仮りに原審が所論のように本件記録を東京地方裁判所に送付する前に、当裁判所に送付したとしても、東京地方裁判所は記録の存する当裁判所より記録を取り寄せて前記異議申立事件につき裁判する機会があるのであるから何等支障がないのである。故に原審が所論決定をする前に当控訴裁判所に記録を送付したことを以て訴訟手続に違反があつたということはできない。
また刑事訴訟法第三百七十七条第一号所定の違法もないから論旨は理由がない。