大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)4640号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(爭点)

起訴状によると、公訴事実は、被告人がその所有建物の一部を知事の認可を受けないで甲女、乙女、丙女と家賃の額を契約し、乙女と統制額を超える家賃の額を契約したというのであるが、原判決は、契約の相手方を甲及び米人A、甲及び米人某、乙女及び米人B、C、丙女及び米人D、乙女及び米人B、と認定、その間に訴因の変更手続はなされていない。そこでこの場合訴因変更手続の要否が争われた。

(判旨)

およそこのような場合における訴因の変更の要否は、公訴事実と異なる事実を認定することが被告人側に対して不意打を与えたことになりその防禦に実質的な不利益を生ぜしめたといえるかどうかによつて決せらるべきである。これをいま少しく詳しくいうとその認定を変更した部分につき被告人側としてなんらか新たな防禦方法を講ずることが可能であつた場合においては、訴因変更の手続を経ることなく異なる事実を認定することは被告人側に対しいかなる防禦方法を講ずることをも不可能ならしめその防禦と実質的な不利益を生ぜしめたことになるから、訴因の変更を必要とすると解しなければならない。ところで、本件においては、すでに説明したように、公訴事実と判示事項とでは、後者において契約の相手方が一名ないし数名增加しているだけでその点においては全く差異はないのであるから、この程度の相違は一見被告人の防禦になんら不利益な影響を与えることがないもののように考えられる。しかしながら、かく考えるとこの場合においても被告人としてはその認定を変更した部分につきなんらか別個の防禦手段を施す余地があつたといえぬことはない。現に、弁護人は、本件控訴趣意第二において、外国人(連合國人)が借主である場合には地代家賃の統制令の適用がないという法律上の主張をしているのであつて、この主張のごときは、その理由ありや否やはしばらく別として、もし訴因として原判決認定のような事実がはじめから示されていたとしたら当然第一審で主張していた答だといわれた場合には、これを否定することができないであらう。してみれば、少くとも本件の具体的事案においては、被告人に対して盡さしむべき防禦を盡さしめない結果になるのであり、かくの如きはその防禦に実質的な不利益を生ぜしめるという場合に該当するといわざるをえないから、原裁判所としてはまず訴因の変更を俟つてしかる後に判決をすべきであつたのであつて、この手続を経ずに直ちに前記のような事実を認定したことは結局審判の請求を受けなかつた事件について判決をしたものである。

(説明)

訴因の変更手続を必要とするかどうかは、周知とおり新刑訴手続における難問の一つであつて未だ確立された判例もない。本判決も恐らくは反対論もあるところで多少嚴格すぎると批判されるであらろ。いずれにしても具体的な事例が数多く積み重ねられてやがて一定の判例の確立が現われて来ることであらう。なお本判決最後尾の審判の請求を受けなかつた事件について判決をした違法即ち刑訴法第三七八条第三号後段の控訴理由があるように判示しているのは如何なものであらうか。訴因変更の問題についても公訴事実の同一性がないことを理由とする場合は、同法条の問題となるけれども、本件のように訴因の変更手続をすべきに拘らず、これをしなかつたのが違法であるという場合は訴因変更云々は公訴事実の同一性が存することを既に前提としているのだから、右法条ではなく同法第三七九条違背を理由として判断すべきものではなかろうか。

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