東京高等裁判所 昭和26年(う)4726号 判決
原判決が証拠として採用した麹町税務署長作成にかかる職務分掌調査等に関する回答書の記載する所によれば、被告人は昭和二三年九月一日から右税務署間税課に転じて取引高税の監視調査等の職務に従事することになり、翌二四年二月一日に果物、写真、薬種の各業者を担当する迄は洋品雑貨、古道具、木材の各業者を担当していたというのであるから、昭和二四年四月二七日当時、並びに同年三月二七日当時においては、判示第二事実における株式会社「マスヤ」洋装店並びに判示第三事実における原田木材株式会社はいずれも被告人の分掌事務の範囲に属していなかつたことは、まことに所論のとおりである。
しかしながら、右分掌事務の担当たるや、単に右税務署内の、しかも間税課内の一時的便宜的な定めによるものであつて、事務の遂行の円滑迅速を期しようとするいわゆる内規たるに過ぎないものであるから、この定めによる分掌事務の担当が変更したからといつて、大蔵事務官としての間税課員たる地位を失うものではなく、又更に取引高税の監視調査等の職務を行う権限に異動を生ずぬわけではない。従つて被告人は右の各日時当時において右各会社に対しても取引高税の監視調査等を行う職務権限を有つていたものといわなくてはならない。してみれば、被告人が右各会社から、或は職務上好意ある取扱をしたことの謝礼として、或は職務上好意ある取扱をしてもらいたい趣旨でいずれも供与されるものであることを知りながら、金員を収受した以上、まさに被告人はいずれも収賄罪としての刑責に服さなければならないのであつて、その収受の時期如何のごときは毫も問う所ではない。しかも判示第二並びに第三の各事実は、いずれも原判決挙示の証拠によつて、優にこれを証明することができ、記録を精査してみても、原判決の右認定に誤ありとするに由ないので、原判決が右各事実に対し判示法条を適用して被告人を処断したのは、まことに正当である。
従つて、原判決には論旨二において非難するが如き違法の跡はいささかも見出されない。されば、該論旨は理由ないものというの外はない。