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東京高等裁判所 昭和26年(う)4768号 判決 1952年2月13日

控訴人 被告人 新井準三 大間潔

検察官 野本良平関与

主文

原判決を破棄する。

本件を東京地方裁判所八王子支部に差し戻す。

理由

本件控訴の趣意は、末尾添附の弁護人長谷川一雄同池田久連名作成名義の控訴趣意書と題する書面記載のとおりであつてこれに対して当裁判所は、次のとおり判断する。

弁護人控訴趣意第一(三)、について、

仍つて案ずるに、刑事訴訟法第三百二十八条により供述の証明力を争う為めに取調べられた証拠は、これを犯罪事実認定の証拠と為し得ないものと解すべきを相当とする。然るに所論に鑑み本件記録を精査すると、原審昭和二十六年三月二十六日附第六回公判調書の記載によれば、検察官は、刑事訴訟法第三百二十八条により供述の証明力を争う為めに、昭和二十三年五月二十三日附司法警察官作成の藤井公平に対する聴取書の証拠調を請求し、裁判官において該書面の証拠調を為していることその記載上極めて明白である。而して原判決を検討するに、原判決挙示の証拠のうち、麻薬統制主事山田正吾作成の藤井公平に対する聴取書とあるは、正しく前記の供述の証明力を争う為めの証拠として取調べられたものを指称するものであることは本件記録全体から窺われるところである。果して然らば原判決は犯罪事実認定の証拠と為すことのできない証拠を事実認定の証拠に供した違法が存在するものと謂うべく、該違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、此の点の論旨はその理由があり、原判決は到底破棄を免れない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 中野保雄 判事 尾後貫荘太郎 判事 渡辺好人)

控訴趣意

第一被告人両名に対する麻薬取締規則違反の点について

(三) 原判決は、事実認定の証拠とすることのできない証拠を証拠としたという点において、法令の適用を誤つており、それは、明らかに判決に影響を及ぼすところの誤である。

原判決は、事実認定の証拠として、麻薬統制主事山田正吾作成の藤井公平に対する聴取書を引用している。しかし、この聴取書は、刑事訴訟法第三二八条により供述の証明力を争うための証拠であつて(第六回公判調書記録第一冊第九六丁裏末行目以下)、事実認定の証拠とすることはできないものである。これを事実認定の証拠に供した原判決は、証拠法の適用を誤つたものとしなければならない。

(その他の控訴趣意は省略する。)

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