東京高等裁判所 昭和26年(う)4786号 判決
然し乍ら、事実審において、一旦取り調べた証拠であつても、その後証拠とすることができないものであることが判明したときは、職権で其の証拠の全部又は一部を排除する旨の決定をすることのできることは刑事訴訟規則第二百七条の明定するところであるから、事実審たる原審が上田弘の司法警察員に対する供述調書及び同人の検察官に対する供述調書につき、一旦刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号により証拠とすることができるものと認めて所定の証拠調をしておき乍ら、爾後これを証拠とすることのできないものと認めた結果その全部を排除する旨の決定をしたことは手続上の措置として寧ろ正当であつて、これがために法令の違背等何等批議さるべきものありとすることはできない。而して仮令証拠とすることのできない供述調書と雖も、刑事訴訟法第三百二十八条により被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うための証拠とすることができる(而してこの「証拠とすることができる」とは「方法としてこれを使用することができる」との意味であることは、既に当審判例―昭和二四年(を)新第五五一号、同二五年四月二八日第一刑事部判決―の示すところであつて、同条の趣旨に基ずき証拠とした以上これをナンセンスであるとの所論は当らない)のであるから、原審が右規定に基ずき右趣旨をもつて前示排除した供述調書を塚本義人の司法警察員に対する供述調書と共に同条に所謂他の供述の証明力を争うための証拠としたからといつて所論言うが如き法令違背の過誤を冒したものと言うことはできない。
論旨は理由がない。