東京高等裁判所 昭和26年(う)5065号 判決
よつて、按ずるに、被告人は原審公判廷において本件アルコールはその売主中原史夏子から飮めるアルコールをというて買つたものである旨供述し、原審証人中原史夏子は原審公判廷において被告人から飮めるアルコールをという話はきかなかつた旨供述しているが、被告人に販売したアルコールはベンゾール変性アルコールであつて、被告人にそれを送付する前にそれにメタノールが含有されていないかどうかをマルミヤ薬局で検査してもらつたところメタノールは含有していないということであつた旨供述し、なお本件事故発生後被告人から送り返された使い残りのものは自分方から被告人宛に発送した容器ではあつたが、その内容はベンゾール変性アルコールではなかつた旨供述しているのである。
これによつて考えれば被告人が中原史夏子から買受けたものが、本件メタノールを含有していたアルコールであつたか、或は中原方から被告人方に送られたものは右検査を経たベンゾール変性アルコールであつたがその運搬の途中内容物が入れ変つたものであるかどうかの事実が確定されないかぎり被告人の過失の有無はこれを判別し得ないものである。しかるにこの点を調査確定することなく直ちに被告人に過失の責任を負わせた原判決は審理をつくさない結果事実を誤認したものといわなければならない。
この誤認は勿論判決に影響を及ぼすものであるから論旨は結局理由があり、原判決は破棄すべきものである。