東京高等裁判所 昭和26年(う)5118号 判決
仍つて、所論に鑑み、本件記録を精査し原判決を検討勘案するに、被告人奥津政夫、同箕口恒利、同四宮政雄、同町田恒喜、同寺本正に対する各起訴状の公訴事実の記載によれば、被告人等は、孰れも自ら漁業を営む者であるがとして被告人の地位を示して居るに拘らず、原判示事実によれば、右被告人等は孰れも他の漁業経営者の事務担当者としてその業務に関してと認定していること洵に所論のとおりである。
案ずるに、物価統制令違反罪において、経営者自ら事業の主体として違反行為を為す場合と、他人の事業につきその業務の担当者がその業務に関し違反行為を為す場合とは、其の行為の効果の帰属する主体を異にし、即ち前者は行為者自身に帰属するに反し、後者は行為者に帰属せず経営者たる他人に帰属するのであつて、従つて公訴事実は全然異るものと解するを相当とする。果して然らば、原判決が前記の如く、右被告人等に対し、孰れも他の漁業経営者の事務担当者としてその業務に関し違反行為を為したものと認定したのは、検察官の起訴した公訴事実について審判せず、審判の請求のない事実について審判したものと謂うべく此の点の論旨はその理由があり、原判決は到底破棄を免れない。