大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)5138号 判決

訴訟記録によれば原審弁護人が第一回公判期日において情状の点立証のため新保亀太郞を証人として申請し尋問の決定がなされたところ、第二回公判期日において同弁護人は裁判所に対し右証人不出頭のため尋問権を放棄する旨を告げ、検察官も同様その尋問権を放棄する旨を告げたため、裁判所は証人新保亀太郞に対する証拠決定を取消し却下する旨を告げたことは所論のとおりである。而して証拠調の請求を却下するには相手方又はその弁護人の意見を聞かなければならないことは刑事訴訟規則第百九十条の規定するところであるが、原審弁護人が証人新保亀太郞に対する尋問権を放棄するとの趣旨は右証人の取調べ請求を放棄する趣旨と解すべく、その相手方たる検察官も亦反対尋問権を放棄したため原審は該証人に対する証拠調の決定を取消したものであることは記録上推認しえられる。即ち、証人新保亀太郞に対する証拠調の請求は請求人によつて放棄されたがために裁判所は該申請に基いてなした証拠決定を取消したのであるから初めから右証人の取調べ請求も証拠決定もなかつたこととなつたのである。故に既に消滅して存在せざる右証拠調べの請求を却下すると謂ふことは全く空を撃つに等しく何等意義のないことであつて原審としては単に右証拠決定を取消すを以て足り更に右請求却下の決定をしたことは無意義なことをしただけであるから、右刑事訴訟規則第百九十条に所謂証拠調の請求の却下には当らない。従つて相手方たる検察官の意見を聞く必要がないのであつて原審の訴訟手続には法令の違反はない。論旨は理由がない。

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