大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)526号 判決

案ずるに、物に対する事実上の支配が、上下主従の関係を有するに過ぎない場合においては、物の従たる支配者が主たる支配を排して、物に対する独占的支配をするに至つた時は窃盜罪を構成するものと解するのが相当である。而して、原判決の挙示する証拠によれば、被告人は、占領軍に自動車運転手として雇われ、占領軍所有の自動車を使用して、夜間勤務者の配置輸送、又は、物資の輸送等に従事していた者で、これに要するガソリンも、毎日出発に際して、その必要量を占領軍から受け取つて出発し、帰つた際は、通行許可証により、出発当時と帰つて来た時のマイル数を計算して、その日のガソリン消費量を書面によつて報告していたことが認められるのであるから、被告人が、自己の運転中の自動車内にあるガソリンに対して、事実上の支配を有してしたことは明らかであるが、しかし、それは、ただ、占領軍の指揮監督の下に有していた従属的支配であつて、そのガソリンに対しては、同時に、指揮監督者である占領軍の主たる事実上の支配があつたものといわなければならない。してみれば、被告人が不正領得の意思で、自分の運転する占領軍所有自動車のガソリンタンク内から、ガソリン五ガロン位を他の容器に移し取つた行為は、即ち、そのガソリンに対する占領軍の主たる事実上の支配を排して、これを自己の独占支配内に置いたものと認むべく、その所為が、窃盜罪を構成すべきことは前示説明によつて明らかであるから、原判決が、被告人の本件所為を判示の如く認定し、これに対して、刑法第二百三十五条を適用処断したのは正当であつて、原判決には、所論のような違法はなく、論旨も亦理由がない。

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