大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和26年(う)603号 判決

原審第二回公判調書に依ると、原審検察官は、原審第二回公判廷において起訴状記載の窃盜の訴因について、業務上横領の事実を予備的訴因として追加する旨陳述していることが認められるが、業務上横領の罰条を予備的に追加する旨陳述したことが記録上認められず、しかも原判決は予備的訴因である業務上横領の事実を認定して有罪の判決をしていることいずれも所論の通りである。しこうして右のように業務上横領の事実を予備的訴因として追加する場合には、刑事訴訟法第二百五十六条第五項に依り罰条をも予備的に追加すべきであり、検察官がこれをしない場合は、原審としては、その追加を命ずべきこと勿論であるから、その追加を命じないで、予備的訴因に基いて審理判決したことは、右法条に違背したものといわねばならないのである。しかし原審第二回公判調書に依ると、原審検察官の陳述した業務上横領の訴因は、具体的且つ明確であることが認められるし、記録に現われた原審の審理の経過に徴すれば、検察官が右のような罰条を追加しなかつたことは、被告人の権利の防禦に実質的不利益を及ぼしたものとは認められず、従つて判決に影響を来したものと認められないから、これに依り原判決を破棄すべきものということはできない。それ故この点の論旨は理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!