大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)72号 判決

よつて、記録を調査するに、原判決が、その理由において、「被告人は、酒類製造の免許を受けないで(中略)アルコール分約十九度の合成清酒約九升を醸造し製造したものである。」との事実を認定し、その証拠として、一、被告人の原審公廷における供述、「検察官事務取扱検察事務官小倉広次作成被告人第一回供述調書の記載、一、同事務官作成小内権次第一回供述調書の記載、一、同事務官作成佐藤弘第一回供述調書の記載、一、検察官検事藤井洋作成李三祚第一回供述調書の記載、一、宝賀正門作成の鑑定書の記載を挙示し、右認定事実に対して、酒税法第六十条第一項その他の法条を適用していることは、所論のとおりである。而して、右酒税法第六十条第一項所定の罪は、免許を受けずして、酒類、酒毋、又は醪を製造することによつて成立する犯罪であつて、同法において、酒類とは、アルコール分一度以上の飮料(アルコール専売法の適用を受けるアルコールを除く)を指称することは、酒税法第二条に明定するところであるから、前示酒税法第六十条第一項所定の罪においては、その製造にかかる飮料のアルコール分含有量が一度以上であることは、該犯罪の成立に欠くことのできない要件の一つであるといわなければならない。

然るに、原判決が、その判示事実認定の証拠として採用した前示各証拠の内容を検討するに、宝賀正門作成の鑑定書には、酒精度一九・三度なる記載があつて、原判示のアルコール分含有量に、ほぼ、照応するかのようであるが、同鑑定書記載の鑑定資料が、本件の合成清酒に該当するものであるとの点については、同鑑定書の記載、その他原判決挙示のすべての証拠に徴するも、未だ、これを確認することができないのであるから、右鑑定書の記載は、これを以て、本件合成清酒のアルコール分含有量を認定する資料とすることができないものといわなければならない。而して、原判決挙示の前示証拠中、右鑑定書を除けば、ただ被告人が、原審公廷において、検察官の起訴状朗読の後、証拠調に入る前に、「事実はそのとおり相違ありませんから、別に申上げることはありません。」と述べた以外には、原判示合成清酒のアルコール分含有量が判示の如くであることを認定するに足る資料は、一つも発見することができないのであるから、原判決は、その判示事実中、本件犯罪の成立に欠くことのできない右アルコール分含有量の点につき、被告人の自白のみによつて、これを認定したものというべく、従つて、日本国憲法第三十八条第三項、刑事訴訟法第三百十九条第二項の規定に違反し、その結果、適法な証拠に基かないで、罪となるべき事実を認定したものといわなければならない。してみれば、原判決には、結局、判決に理由を附せず、又は理由にくいちがいがあることに帰するから原判決は、この点において、到底破棄を免れない。

論旨は結局理由がある。

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